オフショアBPOを取り巻く環境は、人件費や為替、国際情勢の変化によって以前とは異なる局面を迎えています。こうした中、国内に業務を戻す「リショアリング」を選択肢に加える企業も見られるようになりました。オフショアを継続すべきか、リショアリングへ切り替えるべきか、判断に迷う担当者も少なくないはずです。本記事では、オフショアとリショアリングそれぞれの特徴を整理し、自社に合ったBPO戦略の考え方を解説します。
オフショアBPOを取り巻く環境の変化
オフショアBPOとは、業務の一部を海外の拠点や事業者に委託する手法を指します。長年、コスト最適化の手段として活用されてきましたが、近年はその前提となる環境そのものが変化しつつあります。
コスト面の変化
委託先国の経済成長に伴い、現地の人件費水準は上昇傾向にあるといわれています。日本貿易振興機構(ジェトロ)の調査によれば、アジア各国の日系企業における賃金ベースアップ率はインフレ率予測を上回る水準で推移しており、現地人件費の上昇は継続的な傾向として確認できます(出典:JETRO「2025年度 海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編)」2025年11月発行 )。加えて為替相場の変動も、オフショアで得られるコストメリットの大きさに影響を与える要因のひとつです。導入時に想定していたコスト差が、時間の経過とともに縮小するケースもあり得ます。
地政学・情勢面の変化
リショアリングとは
リショアリングとは、海外に委託・移転していた業務や生産機能を、国内に戻す動きを指します。オフショアの対義語的な位置づけとして語られることが多い概念です。
リショアリングが注目される背景
前述したコストメリットの縮小や情勢変化への懸念に加え、国内の運用品質や迅速な意思決定を重視する動きが、リショアリングが注目される背景として挙げられます。経済産業省が2026年6月に公表した「令和8年版通商白書」でも、世界経済の不確実性が高まる中でサプライチェーンの強靱化や調達先の多角化が課題として指摘されています(出典:経済産業省「令和8年版通商白書」 )。同白書が主に論じているのは製造・調達領域ですが、特定の国・地域への依存を避けるという考え方は、業務委託の分野にも共通します。BPOにおけるリショアリングも、その延長線上にある選択肢といえます。ただし、リショアリングにも人材確保や国内での人件費といった別の課題が伴うため、単純にオフショアより優れているというわけではありません。
オフショアを続けるべき業務・見直すべき業務
すべての業務を一律にオフショアからリショアリングへ切り替える、あるいはその逆を選ぶ必要はありません。業務ごとの特性に応じて判断することが現実的です。
継続に適している業務の特徴
オフショアを続けても支障が出にくいのは、業務手順が固まっており、現地での運用がすでに安定しているケースです。代表的な特徴は次のとおりです。
| 特徴 | 該当しやすい業務例 |
|---|---|
| 定型化・マニュアル化が進んでいる | データ入力、定型的な経理処理など |
| 現地拠点で品質・体制が安定している | バックオフィス処理、定型的な問い合わせ一次受付など |
見直しを検討したい業務の特徴
一方で、マニュアル化しきれない判断が発生する業務や、社内との往復が頻繁に生じる業務は、オフショアのままでは運用負荷が高くなりやすい傾向があります。
| 特徴 | 該当しやすい業務例 |
|---|---|
| 都度の判断や柔軟な対応が求められる | 非定型な顧客対応、例外処理の多い業務 |
| 社内の他部門と密な連携が必要 | 社内問い合わせ対応、企画・開発部門と連動する業務 |
自社に合ったBPO戦略の選び方
オフショアとリショアリングは対立する選択肢ではなく、組み合わせて活用することも可能です。
判断軸の整理
オフショアを継続するか見直すかを検討する際は、コスト・品質やスピード・リスク許容度の3つの観点から現状を確認すると、論点が整理しやすくなります。
| 観点 | 確認したいこと |
|---|---|
| コスト | 現状の委託コストと、切り替えた場合の総コストを比較する |
| 品質・スピード | 現状の運用品質や意思決定スピードに課題があるか |
| リスク許容度 | 特定国・地域への依存によるリスクをどこまで許容できるか |
3つの戦略パターン
前項の判断軸を踏まえると、BPO戦略は「オフショア継続」「リショアリング」「ハイブリッド」の3つに整理できます。どれか1つが正解というものではなく、業務ごとに使い分けることも可能です。
| パターン | 特徴 |
|---|---|
| オフショア継続 | 現状の体制で一定のコストメリットが維持できている場合に適する |
| リショアリング | 品質・スピードや情勢リスクへの懸念が大きい場合に検討される |
| ハイブリッド | 業務内容に応じて、オフショアと国内運用を使い分ける |
戦略を見直す際の進め方
BPO戦略を見直す場合も、いきなり切り替えるのではなく、段階を踏んで進めることが望まれます。
準備フェーズ
まず着手すべきは、現状の可視化です。委託中の業務を単位ごとに分解したうえで、選択肢を比較検討します。
| ステップ | 主な内容 |
|---|---|
| 現状の棚卸し | 委託中の業務内容・コスト・品質を業務単位で整理する |
| 選択肢の比較検討 | 継続・リショアリング・ハイブリッドのそれぞれで試算・比較する |
実行フェーズ
方針が固まったら、全業務を一度に動かすのではなく、影響範囲の小さい業務から順に移行し、結果を見ながら範囲を広げていきます。
| ステップ | 主な内容 |
|---|---|
| 対象業務からの段階的な移行 | 影響範囲の小さい業務から着手し、状況を見ながら拡大する |
| 効果の検証と見直し | 切り替え後も定期的にコスト・品質を検証し、必要に応じて調整する |
一度の切り替えで完結させようとせず、状況に応じて柔軟に見直せる体制を残しておくことが、長期的な運用の安定につながります。
まとめ
オフショアとリショアリングは、どちらか一方が常に優れているというものではなく、業務特性や自社が置かれた状況によって適した選択が変わります。コスト・品質・スピード・リスク許容度といった複数の観点から現状を棚卸しし、必要に応じてハイブリッドな運用も視野に入れながら、自社に合ったBPO戦略を検討することが求められます。
BPO戦略の見直しについてご相談されたい方は、お気軽にお問い合わせください。
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この記事の執筆者
株式会社ベルシステム24 ソリューションサイト編集部
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