AI導入で失敗しないコンタクトセンター構築ステップと運用のコツ

AI導入で失敗しないコンタクトセンター構築ステップと運用のコツ

公開日:2025.03.21  更新日:2026.07.01
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コンタクトセンターへのAI導入で失敗しないためには、何から始めればよいのでしょうか。応対品質の維持と業務効率の両立、人材の確保といった課題に直面するなかで、コンタクトセンターのAI活用に関心を持つ企業は増えています。一方で、目的が曖昧なままAI導入を進めてしまい、期待した効果が得られない、現場で使われずに終わってしまう、といった声も少なくありません。

この記事では、コンタクトセンターにAIを導入するメリットや活用領域の整理から、よくある失敗とその原因、失敗を避けるための構築ステップ、そして導入後の運用を成功させるコツまでを順に解説します。AI導入を検討している方が、自社のコンタクトセンターに合った進め方を見極めるための参考になれば幸いです。

コンタクトセンターにAIを導入するメリットと活用領域

コンタクトセンターのAI活用は、応対業務の負担軽減から顧客体験の改善まで、幅広い領域に広がっています。コンタクトセンターで使われるAIには、チャットボットによる一次対応、AI音声認識による通話の自動テキスト化、生成AIを使った応対履歴の要約など、活用できる場面は多岐にわたります。ここでは、コンタクトセンターにAIを導入することで期待できる主なメリットを、業務効率化・顧客体験(CX)・従業員体験(EX)の3つの観点から整理します。AI導入の目的を明確にするうえでの出発点として確認しておきましょう。

業務効率化につながる活用

コンタクトセンター業務には、通話内容の記録や要約、よくある問い合わせへの一次対応、応対後の入力作業など、定型的で時間を要する作業が多く含まれます。こうしたコンタクトセンターの定型作業の一部をAIが担うことで、オペレーターはより判断を要する応対や、込み入った相談への対応に時間を割きやすくなります。

例えば、AI音声認識による通話内容の自動テキスト化は、応対後の記録作成にかかる時間の短縮につながる場合があります。生成AIによる応対履歴の要約を組み合わせれば、対応内容の引き継ぎや後からの確認もしやすくなります。こうしたAIの活用は、後処理(ACW)の負担軽減に直結しやすい領域です。

また、チャットボットによる一次対応を取り入れることで、よくある質問への回答をAIで自動化し、入電数そのものを抑える効果が期待できます。問い合わせの一部をセルフサポートやチャットボットへ振り分けられれば、繁忙時間帯の負荷を平準化し、オペレーターが本当に人手を必要とする応対に集中しやすい体制をつくれます。業務効率化を目的としたAI導入では、こうした定型業務のAIによる自動化が中心的な役割を担います。

顧客体験(CX)の向上

コンタクトセンターのAI活用は、顧客側の利便性にも関わります。チャットボットやFAQ検索といったAIを使ったセルフサポートの手段を整えることで、顧客は営業時間を気にせず、自分のタイミングで疑問を解消しやすくなります。電話がつながりにくい時間帯でも、簡単な問い合わせであればその場で解決できる環境は、顧客の不満を抑えることにつながります。

また、過去の問い合わせ履歴や顧客情報をAIが参照し、応対中のオペレーターに関連情報や回答候補を提示する仕組みを取り入れれば、応対のばらつきを抑え、状況に応じた対応がしやすくなります。担当者によって回答が変わる、といった事態を防ぎ、応対品質の安定につながります。

問い合わせの内容や緊急度に応じて、適切な対応窓口へ振り分けるAIの活用も、待ち時間の短縮に寄与します。結果として、顧客が必要なときに必要な情報へたどり着きやすくなり、コンタクトセンター全体のCX向上につながることが期待できます。

従業員体験(EX)の向上

AIによる支援は、応対する従業員の働きやすさにも影響します。回答候補の提示やナレッジ検索の補助によって、経験の浅いオペレーターでも必要な情報にたどり着きやすくなり、応対時の不安や心理的な負担の軽減につながる場合があります。応対中に確認すべき情報をAIがリアルタイムで提示できれば、保留や折り返しの回数を減らすことにもつながります。

定型作業の一部をAIで自動化できれば、対応の難しい問い合わせや改善活動など、人が担うべき業務に集中しやすくなります。単調な繰り返し作業から解放されることは、業務へのやりがいにも関わってきます。

人材の確保や育成が課題となりやすいコンタクトセンターでは、こうした従業員体験の改善が、離職の抑制や育成負担の軽減といった面にも関わってきます。コンタクトセンターのAI導入を業務効率化だけでなく、働く環境の改善という観点からとらえることも、AI活用を定着させるうえで大切な視点です。

コンタクトセンターのAI導入でよくある失敗とその原因

コンタクトセンターのAI導入は、進め方を誤ると期待した効果が得られないことがあります。便利なAIツールを導入したつもりが、現場で使われない、効果がわからない、といった状況に陥るケースは珍しくありません。ここでは、コンタクトセンターのAI導入でつまずきやすい代表的なパターンと、その背景にある原因を整理します。あらかじめ失敗の傾向を把握しておくことが、構築ステップを検討するうえでの土台になります。

目的が曖昧なまま導入してしまう

「AIを導入すること」自体が目的化してしまい、解決したい課題が定まっていないケースです。話題になっているから、競合が導入しているから、といった理由だけで進めてしまうと、何を改善したいのかが曖昧なままになりがちです。その結果、導入後に効果を測る基準も持てず、活用が定着しにくくなります。

コンタクトセンターのAI導入を検討する際は、後処理時間の短縮なのか、入電数の削減なのか、応対品質の安定なのか、優先して解決したい課題を先に明確にしておくことが重要です。課題が定まっていれば、どの業務にどのAIを使うべきかも自然と見えてきます。

現場の運用体制が追いつかない

ツールを導入しても、現場の運用ルールや教育が整っていないと、十分に使われないまま終わってしまうことがあります。AIが提示する回答候補をどう扱うか、AIで対応しきれない問い合わせをどう有人対応へつなぐか、誤った応答をどう検知し修正するか、といった運用面の設計が欠かせません。

特にチャットボットや自動応答を導入する場合、想定外の質問への対応や、有人対応への切り替えの導線が整っていないと、かえって顧客の不満を招くことがあります。導入する技術そのものよりも、それを現場で運用する体制の準備が、成否を分ける要素になりやすいといえます。

下表に、コンタクトセンターのAI導入でよく見られる失敗のパターンと主な原因、対応の方向性を整理しました。

失敗のパターン主な原因対応の方向性
導入後に活用が定着しない 解決したい課題が曖昧 導入前に目的と評価指標を明確化する
現場で使われない 運用ルール・教育の不足 運用設計と教育をあわせて準備する
回答精度が安定しない ナレッジの整備不足 元データの整理と継続的な更新を行う
効果が判断できない 効果測定の仕組みがない 導入前に測定方法を決めておく
顧客の不満につながる 有人対応への導線が不十分 AIと人の役割分担を設計しておく

このように、失敗の多くは技術そのものではなく、導入前の準備と運用設計の不足に起因する傾向があります。裏を返せば、これらの原因をあらかじめ押さえておくことで、AI導入でつまずくリスクを抑えやすくなります。

失敗しないAI導入の構築ステップ

コンタクトセンターのAI導入を成功させるには、いきなり全面展開するのではなく、段階を踏んで進めることが現実的です。前章で見た失敗の多くは、準備や検証を省いて一気にAI導入を進めたことに起因します。ここでは、課題の明確化から検証、拡大までの構築ステップを順に整理します。各ステップで何を確認すべきかを押さえておきましょう。

失敗しないAI導入の構築ステップ

ステップ1:課題の明確化と適用範囲の選定

最初に取り組むべきは、自社のコンタクトセンターが抱える課題の整理です。どの業務に時間がかかっているのか、どこに顧客の不満が生じやすいのか、どの問い合わせが多いのかを洗い出し、AIで解決したい範囲を具体的に定めます。コンタクトセンターのすべての業務を一度にAI化しようとするのではなく、効果が見込みやすい領域から優先順位をつけることが大切です。

あわせて、その課題を測る指標も決めておきます。後処理時間、応答率、一次解決率、入電数といった、効果を判断できる基準を持つことで、導入後の評価がしやすくなります。この段階で指標を定めておかないと、後になって効果の有無を判断できず、活用の継続が難しくなります。

適用範囲を選ぶ際は、現場の負担が大きく、かつ定型的な業務から検討すると、AI導入の効果を実感しやすくなります。例えば、よくある問い合わせへの一次対応や、通話内容の記録作成などは、最初の対象として選ばれやすい領域です。

ステップ2:スモールスタートでの検証

適用範囲が定まったら、まずは小規模に試すことをおすすめします。特定の業務や一部のチームに限定してAIを導入し、想定した効果が得られるか、現場の運用に無理がないかを確認します。最初から全社的に展開すると、問題が起きたときの影響が大きく、軌道修正も難しくなります。

検証段階では、うまくいった点だけでなく、想定と異なった点も記録しておきます。AIの回答精度はどの程度か、現場のオペレーターは使いこなせているか、顧客の反応はどうか、といった観点で確認します。こうした情報は、本格展開に向けた運用ルールやナレッジの調整に役立ちます。

また、検証期間中はオペレーターからのフィードバックを集める仕組みを用意しておくと、現場視点での課題が見えやすくなります。実際に使う人の声を反映することが、その後の定着につながります。

ステップ3:効果測定と段階的な拡大

検証で得られた結果を、ステップ1で定めた指標にもとづいて評価します。効果が確認できた範囲から段階的に広げていくことで、運用上のリスクを抑えながら活用を定着させやすくなります。期待した効果が出なかった場合も、原因を分析し、適用範囲や運用方法を見直したうえで再度検証する流れをとります。

拡大の過程では、対象業務ごとに運用ルールを見直し、必要に応じて教育やナレッジの整備もあわせて進めます。業務によってAIの適性や運用上の注意点は異なるため、一律のルールをそのまま当てはめるのではなく、コンタクトセンターのそれぞれの業務に合わせた調整が求められます。

下表に、AI導入の構築ステップごとの主な実施内容と確認のポイントをまとめました。

ステップ主な実施内容確認のポイント
ステップ1:課題の明確化 課題の洗い出しと適用範囲・指標の設定 解決したい課題と評価基準が定まっているか
ステップ2:スモールスタート 一部業務での試行と効果検証 想定した効果と運用への影響を確認できたか
ステップ3:効果測定と拡大 検証結果の評価と段階的な展開 指標にもとづき拡大の判断ができているか

AI導入後の運用を成功させるコツ

コンタクトセンターのAI活用は、導入して終わりではなく、運用を続けるなかで精度や効果を高めていくものです。AI導入の時点では十分でも、時間の経過とともに情報が古くなったり、想定していなかった問い合わせが増えたりします。ここでは、コンタクトセンターのAI導入後に成果を安定させるための運用上のコツを整理します。継続的な改善を前提に体制を整えておくことが大切です。

ナレッジの整備と継続的な更新

AIの回答精度は、もとになるナレッジの質に大きく左右されます。FAQや応対マニュアル、過去の問い合わせ対応の記録などの情報を一元的に整理し、内容が古くなっていないか定期的に見直すことが欠かせません。情報が分散していたり、内容に矛盾があったりすると、AIが適切な回答を返せなくなります。

新しい問い合わせや、商品・サービスの変更に合わせてナレッジを更新する運用を組み込むことで、AIの回答精度を保ちやすくなります。誰がいつナレッジを更新するのか、その役割と頻度をあらかじめ決めておくと、更新が滞らずに済みます。ナレッジの整備は地道な作業ですが、コンタクトセンターのAI活用の土台となる重要な取り組みです。

AIと人の役割分担の設計

AIは定型的な対応や情報提示を得意とする一方、込み入った相談や、感情への配慮が必要な場面では人の対応が求められます。どこまでをAIに任せ、どこから人が引き継ぐかをあらかじめ設計しておくことが重要です。すべてをAIで完結させようとすると、かえって顧客の不満を招くことがあります。

例えば、チャットボットで対応しきれない問い合わせを、スムーズに有人対応へつなぐ導線を整えておけば、顧客を待たせたり、たらい回しにしたりする事態を防ぎやすくなります。AIと人がそれぞれの得意分野を担い、補い合う体制を築くことが、応対品質と業務効率の両立につながります。

役割分担を考える際は、顧客にとってどの対応がストレスなく進むかという視点を持つことが大切です。業務効率化だけを優先してAIに寄せすぎると、顧客体験を損なうおそれがあります。

定期的な効果検証と改善

運用を始めた後も、設定した指標にもとづいて効果を定期的に確認します。後処理時間や一次解決率、顧客からの評価などを継続的に見ていくことで、想定した効果が出ているかを把握できます。想定した効果が出ていない場合は、AIの設定や運用ルール、ナレッジの内容を見直し、改善を重ねていきます。

チャットボットであれば、AIが回答できなかった質問や、有人対応へ切り替わった割合を分析することで、改善すべき点が見えてきます。こうしたデータを活用した検証と改善のサイクルを続けることが、AI活用の精度を高めることにつながります。

このサイクルを継続することで、コンタクトセンターのAI活用を自社の業務に合った形に近づけていくことができます。コンタクトセンターのAI導入は、導入時の状態を維持するのではなく、運用しながら育てていく姿勢が、長期的な成果につながります。

まとめ

コンタクトセンターのAI導入は、業務効率化や顧客体験・従業員体験の改善といった面で役立つ可能性があります。チャットボットによる一次対応やAI音声認識による業務の自動化、ナレッジを活用した応対支援など、活用できる領域は広がっています。一方で、目的が曖昧なまま進めたり、運用体制の準備が不足したりすると、期待した効果が得られないことも少なくありません。失敗を避けるうえでは、解決したい課題と評価指標を先に定め、スモールスタートで効果を確認しながら段階的に広げていく進め方が現実的です。導入後も、ナレッジの整備やAIと人の役割分担、定期的な効果検証を続けることが、AI活用を定着させる鍵になります。コンタクトセンターのAI導入を成功させるには、技術の選定以上に、こうした準備と運用の積み重ねが大切だといえるでしょう。

ベルシステム24では、コンタクトセンターの運営で培ったノウハウをもとに、AI活用やDXコンタクトセンターに関するご相談を承っています。導入の進め方を検討される際は、DXコンタクトセンターや生成AI活用コンサル(生成AI Co-Creation lab.)もあわせてご参照ください。

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この記事の執筆者

株式会社ベルシステム24 ソリューションサイト編集部

コンタクトセンターの立ち上げ・運営のTIPSやAI活用事例など、現場に役立つ情報を発信しています。