提案で終わらない!『実行できるBPR』とは

提案で終わらない!『実行できるBPR』とは

2025.12.24
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「業務改革のプロジェクトを立ち上げたのに、いつの間にか立ち消えになってしまった」
「コンサルタントの提案書は素晴らしいのに、現場で実行できない」

こんな経験はありませんか?企業が業務改革に取り組む中で、実行段階で様々な課題に直面し、思うような成果が出ないケースは少なくありません。

本記事では、BPR(Business Process Reengineering)を絵に描いた餅で終わらせず、現場で本当に機能させるための具体的な方法をご紹介します。BPR実行の際に押さえるべきポイントや、実行段階でよくある課題への対処法など、実務で使える実践的な内容に絞って解説していきます。BPR実行を成功させるためには、計画だけでなく実行プロセスそのものの設計が重要です。

BPRとは何か?基本の理解から始める

BPRは「Business Process Reengineering(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)」の略で、日本語では「業務改革」や「ビジネスプロセス改革」と呼ばれます。一言で表すなら、「仕事のやり方を根本から見直して、より良い方法に作り変えること」です。

従来の「ちょっとした改善」ではなく、「そもそもこの業務は必要なのか?」「もっと効率的な方法はないか?」と根本から問い直すのがBPRの特徴です。

BPRの具体例

経費精算の業務を例に、BPRによる変化を見てみましょう。

改革前の業務フローでは、社員が紙の申請書に手書きで記入し、領収書を貼り付けて上司に提出します。上司が内容を確認して承認印を押し、経理部に持っていきます。経理担当者がExcelに手入力し、月末にまとめて銀行振込を行います。

BPR実行後の業務フローでは、社員がシステム上で経費を申請し、領収書をデータで添付します。上司がシステム上で承認すれば、即座に経理システムに反映され、承認後は速やかに振込処理が行われます。紙の申請書、押印、経理部への物理的な書類移動が不要になり、処理時間が大幅に短縮されます。

このように、業務の流れ全体を見直し、より効率的な方法に再設計するのがBPR実行の本質です。

なぜ今、BPRが必要なのか

現在、多くの企業がBPRに取り組む背景には、いくつかの大きな課題があります。

少子高齢化による人手不足が進む中、限られた人員で業務をこなす必要性が高まっています。働き方改革の実現に向けて、長時間労働を減らし効率的に働ける環境を作ることも求められています。

競争が激しくなる中でコスト削減も欠かせません。業務コストを下げて利益を確保する必要があります。加えて、ITツールやシステムを導入するだけでなく、業務そのものを見直すデジタル化への対応も重要な課題となっています。

BPRと「業務改善」の違い

よく混同されるのが「業務改善」との違いです。

業務改善は、既存の仕事の流れはそのままで部分的に効率化する取り組みです。たとえば、書類の記入項目を減らしたり、承認ステップを1つ削ったりする改善がこれにあたります。

一方、BPRは仕事の流れ自体を根本から見直します。承認プロセス全体を再設計したり、業務フロー全体を抜本的に変更したりする大きな変革です。

BPRはより大きな変革を伴うため、効果も大きい反面、実行の難易度も高くなります。

BPRを検討すべき状況

BPRによる抜本的な見直しが効果的なのは、たとえば次のような状況です。同じ業務に多くの時間がかかっている、業務が属人化して担当者以外ができない、システムを導入したものの業務フローは昔のまま変わっていない、部門間の連携がうまくいかず非効率が生じている、といったケースが該当します。

BPR実行時に注意すべきポイント

BPRの基本を理解したところで、実行段階で特に注意すべきポイントを見ていきましょう。これらを押さえておくことで、スムーズな実行につながります。

運用を見据えた設計が必要

BPRの設計段階では、新しい業務フローの構築に注力するあまり、実際の運用フェーズでの課題が見落とされがちです。

運用開始後には、担当者の育成、マニュアルの整備、トラブル発生時の対応手順、定期的な見直しと改善の仕組みなど、継続的な取り組みが必要になります。運用体制が十分に設計されていないBPR実行は、開始直後は機能しても、時間の経過とともに形骸化するリスクがあります。

実際の運用では、システムのバージョンアップ、組織変更、法令改正など、外部環境の変化にも対応しなければなりません。こうした変化への対応力を持たない硬直的な設計では、持続的な改革効果は期待できません。

推進体制の確立

BPRは片手間では進みません。しかし、「普段の仕事をしながら、空いた時間で改革も進めて」という状況になることがあります。結果として、日々の業務に追われて改革の優先順位が下がり、プロジェクトが停滞してしまいます。

また、部門をまたぐ改革では、各部門の利害が対立することもあります。調整役がいないと、話し合いが平行線のまま進まなくなります。BPR実行には、ある程度まとまった時間を改革に充てられる専任または準専任の担当者を配置することが望ましいと言えます。

現場で機能する設計を実現する主要ポイント

ここからは、実際に現場で使える業務改革を実現するための具体的なポイントをご紹介します。これらは実務において重要性が認識されている要素ですが、組織によってはさらに配慮が必要な点もあります。

評価基準を設定する際には、以下のような観点が重要になります。

現場の声を取り入れる

最も重要なのは、実際に仕事をしている人たちの声を聞くことです。

各部署から実務担当者をプロジェクトメンバーに入れ、業務フローの案ができたら現場の人に見てもらって感想を聞きます。また、試験的に運用してみて問題点を洗い出し、実際に始めてからも改善案を出しやすい雰囲気を作ることが大切です。

ある企業では、承認プロセスの改革で「すべての案件を部長承認必須」という案を検討していました。しかし、現場から「少額案件まで部長承認だと時間がかかりすぎる」と指摘。最終的に、金額に応じた承認ルートを設定し、柔軟に対応できる仕組みに変更したことで、現場の理解を得ながら改革を進めることができました。

標準化と柔軟性のバランスを取る

すべてをガチガチのルールで固めると、現場が対応できなくなります。

データ入力、書類作成、承認フローなど、定型的な処理は徹底的に標準化します。一方で、お客様対応、トラブル処理、判断が必要な業務には、適切な柔軟性を残しておくことが重要です。

標準的な手順から外れる場合のルール(例:上司に相談する、特別承認を得る)を決めておけば、柔軟性を保ちながら管理もできます。業務の性質を見極めて、標準化すべき領域と柔軟性を残す領域を適切に区分することが成功の鍵となります。

段階的に進める

「来月から全部門で新しいやり方に変えます」という一斉変更は、混乱を招きます。段階的な実行のステップとして、まず効果が出やすく比較的簡単な業務から始めます。書類の電子化や定型メールの自動化などが該当します。

次に、小さな成功を社内で共有し、理解を広げます。改革の効果を具体的な数字で共有することで、取り組みの価値を可視化します。

そして、問題点を改善しながら次の業務へ展開します。他部門の意見も取り入れてさらに改良を重ねていきます。

効果が見えやすく、失敗時の影響が限定的な業務から着手することで、成功体験を積み重ね、次の段階への移行をスムーズにすることができます。

わかりやすいマニュアルと教育体制

新しい仕組みを作っても、使い方がわからなければ意味がありません。

良いマニュアルの条件として、専門用語を使わず誰が読んでもわかる言葉で書くこと、図や画面キャプチャを多用すること、「こんなときはどうする?」というQ&A集をつけること、よくあるトラブルと対処法を載せることが挙げられます。

教育面では、集合研修だけでなく個別サポートの時間も確保し、最初の1ヶ月は質問しやすい体制(相談窓口を設ける)を作ります。定期的に振り返りの場を設けて、困っていることを聞くことも大切です。マニュアルは、専門知識のない人でも理解できる平易な言葉で作成することを心がけましょう。

定期的な見直しと改善

一度作った仕組みも、時間が経てば合わなくなってきます。

導入初期は頻繁に問題点を確認し、その後も定期的に見直します。重大な問題があればすぐに対応することも重要です。

見直しの際は、作業時間、エラー数、顧客満足度などの数字で効果を測り、現場の人にアンケートやヒアリングをして、良い点・悪い点を両方聞きます。すぐに改善できることは速やかに実行しましょう。完璧を求めすぎず、実行しながら改善していく姿勢が大切です。

実行を成功させる体制づくりと問題対処

BPR実行を確実に進めるには、適切な推進体制の構築が欠かせません。また、どんなに準備しても実行段階では予想外のことが起こります。ここでは、体制づくりのポイントと、よくある問題への対処法をご紹介します。

推進体制の構築

BPR実行を進めるには、いくつかの重要な役割があります。プロジェクトオーナー(責任者)は、最終決定権を持ちプロジェクト全体を統括します。プロジェクトに対して意思決定権限を持つ管理職が適任で、重要な判断、経営層への報告、リソース確保を担当します。

プロジェクトリーダー(推進役)は、日々の進行管理と調整を行います。プロジェクト管理能力と調整力を持つ人が適任で、スケジュール管理、会議の運営、課題の整理などを担当します。

各部門の担当者は、現場の視点を提供し実務面での確認を行います。実際に業務をしている人が適任で、業務内容の説明、テスト実施、フィードバックなどを担当します。

理想を言えば全員専任が良いのですが、現実的には難しいことが多いです。プロジェクトリーダーはできれば専任、またはかなりの時間を充当できる体制が望ましく、各部門担当者は兼任でも構いませんが定期的に時間を確保しましょう。また、必要に応じて外部専門家を活用することで、社内リソース不足を補うことができます。

コミュニケーション面では、週1回または隔週で進捗確認の定例ミーティングを行い、困っていることを共有してみんなで解決策を考えます。経営層や関係部門への報告も定期的に行い、社内イントラやメールで情報発信することで、成功事例を積極的にアピールしましょう。

よく起こる問題とその対処法

BPR実行段階では、いくつかの問題が発生しやすい傾向があります。代表的なものをご紹介します。

システム導入時には、データの移行がうまくいかない、新旧システムの連携で不具合が出る、操作方法が思ったより複雑で現場が混乱する、といったトラブルが発生することがあります。こうしたリスクに備えるには、本番前に実際のデータで十分な動作確認を行うこと、しばらく新旧両方のシステムを使える並行運用期間を設けること、困ったときにすぐ相談できる窓口を作ることが重要です。また、一部の機能だけ先に使い始めるなど、段階的に切り替える方法も有効です。

また、BPR実行をしても、その効果が数値として表れるまでには時間がかかります。この期間に現場のモチベーションが低下し、元のやり方に戻ってしまうリスクがあります。こうした事態を防ぐには、「まずは今月中にこれを達成」など短期的な目標を設定し、進捗を可視化して改善状況を示すことが有効です。「処理時間が短縮された」「作業負担が軽減された」といった小さな成果も評価し、「今ここまで来ています」と定期的に進捗を共有しましょう。

実行後:効果測定と見直しの進め方

BPR実行後は、その効果を適切に測定し、必要に応じて調整していくことが重要です。

数字で効果を測る

作業にかかる時間は短くなったか、経費は削減できたか、ミスやエラーは減ったか、お客様や社員の満足度は上がったか、といった指標で効果を測定します。

測定のコツとして、改革前の数字を記録しておいて比較できるようにし、毎月定期的に測定してグラフにして見える化しましょう。

現場の声を聞く

数字だけではわからないこともあります。仕事がやりやすくなったか、ストレスは減ったか、もっと良くできる点はないか、といったことを現場に聞きましょう。

声を集める方法としては、アンケート、個別ヒアリング、振り返りミーティングなどがあります。複数の方法を組み合わせることで、より多角的な意見を得ることができます。

見直しのサイクルを回す

データと現場の声から課題を見つけ、改善案を考え、小規模で試してみます。うまくいったら本格導入し、また測定して次の見直しにつなげます。大きな見直しを一度に目指すより、必要に応じて調整を加えていく方が現実的で効果も出やすいと言えます。

まとめ

BPR実行を計画倒れに終わらせず、実際に機能させるには、理想的な設計だけでなく「現場で本当に使える仕組み」を作ることが大切です。

実務の現場において重要とされるポイントを振り返りましょう。現場の声を取り入れること、ルールと柔軟性のバランスを取ること、段階的に進めること、わかりやすい教育を行うこと、そして定期的な見直しを行うこと。これらは実務において重要性が認識されている要素であり、組織によってはさらに別の配慮が必要になることもあります。

BPR実行は業務を根本から見直す抜本的な改革手法です。小さな改善の積み重ねとは異なり、「そもそもこの業務は必要か?」「もっと効率的な方法はないか?」と問い直すことが重要です。ただし、抜本的な改革だからといって、必ずしも全社一斉に実施する必要はありません。影響範囲を限定して始め、成功したら次の領域へ展開していくアプローチも有効です。重要なのは、選んだ範囲については中途半端な改善ではなく、徹底的に見直すことです。

準備を整えてBPR実行を始めることが大切ですが、完璧を求めすぎて実行が遅れるより、十分な準備ができたら実行に移し、運用しながら改善していく姿勢も必要です。これがBPR実行成功の近道です。

業務改革でお困りの際は、専門家のサポートを受けることも検討してみてください。外部の視点が入ることで、見落としていた課題が見つかることもあります。

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