自治体の外国人対応、現場が抱える課題とは?窓口業務の改善策を解説

自治体の外国人対応、現場が抱える課題とは?窓口業務の改善策を解説

2026.01.16
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在留外国人数が過去最高を更新し、自治体の外国人対応の重要性が増しています。出入国在留管理庁の発表によると、2024年末時点の在留外国人数は約377万人に達しました。住民登録や国民健康保険の手続きなど、自治体窓口を訪れる外国人住民も増加しています。しかし、現場では「行政用語をどう説明すればよいかわからない」「やさしい日本語だけでは対応しきれない」といった外国人対応の課題を抱える自治体も少なくありません。本記事では、自治体の外国人対応における課題を整理し、窓口業務を改善するための具体的な方法を解説します。

在留外国人の増加と自治体窓口の現状

日本で暮らす外国人は年々増加しており、都市部だけでなく地方の自治体でも外国人住民への対応が日常業務となりつつあります。まずは在留外国人の現状と、自治体窓口で求められる対応について確認しましょう。

在留外国人数の推移と居住地域の広がり

出入国在留管理庁の発表によると、2024年末時点の在留外国人数は376万8,977人となり、3年連続で過去最高を更新しました。前年末と比較して約35万人、10.5%の増加です。

国籍・地域別では、中国が約87万人で最も多く、次いでベトナム約63万人、韓国約41万人、フィリピン約34万人、ネパール約23万人と続いています。特にベトナムやネパールからの増加が顕著で、技能実習や特定技能の在留資格で働く外国人が地方の製造業や農業の現場にも広がっています。

こうした状況から、外国人住民への対応は大都市に限った話ではなくなりました。地方の自治体でも、外国人住民からの問い合わせや手続き対応が増加しています。

※出典:出入国在留管理庁「令和6年末現在における在留外国人数について」

自治体窓口で対応が必要な手続きとは

外国人住民が自治体窓口で行う主な手続きには、以下のようなものがあります。

手続きの種類具体的な内容対応の難しさ
住民登録 転入届、転出届、転居届の届出 届出の種類や必要書類の説明が複雑
国民健康保険 加入・脱退手続き、保険料の説明 制度の仕組み自体が母国と異なる場合が多い
子育て関連 児童手当、保育所入所、就学手続き 申請書類が多く、記入方法の説明に時間がかかる
税金関連 住民税の納付、課税証明書の発行 税制度の理解が前提となる
生活ルール ごみの分別・収集日、自転車登録など 地域ごとのルールがあり、詳細な説明が必要

これらの手続きは、日本人住民にとっても複雑に感じることがあります。日本語や日本の制度に不慣れな外国人住民にとっては、さらにハードルが高くなります。

自治体の外国人対応で現場が抱える課題

外国人住民の増加に伴い、自治体の窓口現場ではさまざまな課題が生じています。特に、行政特有の専門用語や、多言語対応の限界が大きな壁となっています。

行政用語・制度説明の難しさ

自治体窓口での外国人対応において、最も難しいのが行政用語や制度の説明です。

「住民票」「戸籍」「転入届」「被保険者証」といった行政用語は、日常会話で使う機会が少なく、外国人住民にとって馴染みのない言葉です。日常会話ができる外国人でも、窓口で初めて耳にする用語に戸惑うケースは少なくありません。

さらに、制度そのものの説明も難しい問題です。例えば、国民健康保険は「加入義務がある」「保険料は所得に応じて決まる」「医療費の自己負担は原則3割」といった複数の要素を理解してもらう必要があります。母国に類似の制度がない場合、なぜ加入しなければならないのかという点から説明が必要になることもあります。

マイナンバー制度についても、「番号の用途」「カードの申請方法」「届出が必要な場面」など、説明すべき内容は多岐にわたります。

「やさしい日本語」だけでは限界がある

近年、多くの自治体で「やさしい日本語」の活用が進んでいます。やさしい日本語とは、難しい言葉を言い換え、短い文で伝えることで、外国人にもわかりやすくした日本語のことです。

例えば、「届出を提出してください」を「届けを出してください」と言い換えたり、「受理されました」を「受け取りました」と言い換えたりします。

やさしい日本語は有効な手段ですが、すべての場面で十分とは限りません。日本語をほとんど話せない外国人や、来日して間もない住民には、母語での説明が必要な場合もあります。また、職員によってやさしい日本語のスキルに差があり、対応品質にばらつきが生じることもあります。

やさしい日本語は多言語対応の代替ではなく、あくまで補完的な手段として位置づけ、他の方法と組み合わせて活用することが重要です。

自治体の外国人対応を改善する方法

窓口業務における外国人対応の課題を解決するためには、複数の方法を組み合わせることが有効です。ここでは、自治体で導入しやすい改善策を紹介します。

多言語通訳サービス・電話通訳の活用

窓口での対応をサポートする方法として、多言語通訳サービスの活用があります。

電話通訳サービスでは、窓口職員と外国人住民の間に通訳者が入り、三者間通話で対応します。職員が日本語で説明した内容を通訳者が外国語に訳し、外国人住民の発言を日本語に訳して職員に伝えます。専門のオペレーターが対応するため、行政用語の通訳にも対応可能なサービスが多くあります。

タブレット端末を活用した映像通訳サービスもあります。画面越しに通訳者の顔が見えることで、外国人住民に安心感を与えられるというメリットがあります。書類を画面に映しながら説明できるため、申請書の記入案内などにも適しています。

これらのサービスは、必要な時だけ利用できるため、専任の通訳職員を配置するよりもコストを抑えられる場合があります。

多言語版の申請書・案内資料の整備

窓口での説明負担を軽減するためには、申請書や案内資料の多言語化も効果的です。

転入届や国民健康保険の手続き案内、ごみの分別ルールなど、よく使われる資料を多言語で用意しておくことで、口頭での説明を補完できます。外国人住民が自宅に持ち帰って確認することもできるため、理解の促進にもつながります。

総務省や自治体国際化協会(CLAIR)では、自治体向けに多言語の資料テンプレートを提供しています。ゼロから翻訳を作成するのではなく、こうした既存のリソースを活用することで、効率的に多言語対応を進められます。

また、ホームページへの多言語情報の掲載や、多言語対応のチャットボット導入により、窓口に来る前の段階で情報提供を行うことも、職員の負担軽減につながります。

窓口業務の外部委託(BPO)という選択肢

より本格的に外国人対応を強化したい場合は、窓口業務の外部委託も選択肢となります。

BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を活用すれば、多言語対応が可能なスタッフによる窓口対応や、外国人向けコールセンターの運営、申請書類の受付・確認業務などを専門事業者に委託できます。

外部委託のメリットは、専門事業者のノウハウを活用して短期間で体制を構築できる点です。外国人住民が多い時期に限定した委託や、特定の窓口業務のみの委託など、自治体のニーズに合わせた柔軟な対応が可能な場合もあります。

外国人対応に取り組む自治体が意識すべきポイント

外国人対応を効果的に進めるために、自治体として意識しておきたいポイントを紹介します。

地域の外国人住民の構成を把握する

外国人対応を検討する際には、まず地域にどのような外国人が住んでいるかを把握することが重要です。

住民基本台帳のデータを分析すれば、国籍別の人数や、在留資格の傾向を把握できます。技能実習生が多い地域と、永住者や定住者が多い地域では、必要な対応が異なります。技能実習生は監理団体や受入れ企業を通じて情報を得る機会がある一方、永住者や家族滞在の住民は自身で手続きを行う必要があるため、自治体窓口を利用する場面が多くなる傾向があります。

また、どの窓口でどのような問い合わせが多いかを記録・分析することで、優先的に対応すべき業務が明確になります。限られたリソースを効果的に配分するためにも、データに基づいた現状把握が欠かせません。

庁内連携と多文化共生の視点

外国人対応は、特定の部署だけで完結するものではありません。住民課、保険年金課、子育て支援課、税務課など、複数の部署が関わります。

部署ごとに対応方針やツールがバラバラでは、外国人住民にとっても職員にとっても非効率です。庁内で外国人対応の方針を共有し、使用するツールや通訳サービスを統一することで、一貫した対応が可能になります。

また、外国人対応は単なる「言葉の問題」ではなく、多文化共生の視点で捉えることも大切です。外国人住民が地域社会の一員として安心して暮らせる環境づくりは、自治体の重要な役割です。窓口対応の改善は、その第一歩といえるでしょう。

まとめ:外国人対応は、通訳サービスや多言語資料の整備で改善できる

在留外国人数は増加を続けており、自治体の外国人対応は今後ますます重要な課題となります。

窓口現場では、行政用語の説明の難しさや、やさしい日本語だけでは対応しきれないケースなど、さまざまな課題が生じています。こうした課題を解決するためには、多言語通訳サービスの活用、申請書や案内資料の多言語化、必要に応じた窓口業務の外部委託など、複数の方法を組み合わせて検討することが重要です。

まずは地域の外国人住民の構成を把握し、優先すべき言語や業務を明確にした上で、段階的に対応を強化していきましょう。

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