属人化解消のための経理BPR|業務標準化で実現する継続性と効率化

属人化解消のための経理BPR|業務標準化で実現する継続性と効率化

2026.01.05
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経理業務の属人化は多くの企業が抱える課題です。特定の担当者にしかわからない処理方法や、マニュアル化されていない暗黙知の存在は、担当者の異動や退職時に業務が停止するリスクを生み出します。本記事では、BPR(業務プロセス改革)を活用した経理BPRの実践により、属人化を解消しながら業務継続性と効率化を同時に実現する方法を解説します。

経理業務における属人化の実態と課題

経理業務は専門性が高く、複雑な会計処理や税務知識を必要とするため、属人化が進みやすい領域です。ここでは、経理業務で属人化が発生する背景と、それがもたらすリスクを整理します。

経理業務で属人化が発生する要因

経理業務における属人化は、業務の特性と組織体制の両面から生まれます。主な要因として以下が挙げられます。
  • 業務手順の文書化不足

    独自の処理方法や確認フローが文書化されず、担当者の経験と記憶に依存した運用となり、他のメンバーが業務を理解できない状態が続きます。

  • 取引先ごとの個別対応の蓄積

    請求条件や支払条件の違い、過去の経緯に基づく特例的な処理が、担当者の頭の中にしか存在しない情報として蓄積されていきます。

  • 経理部門の人員不足と業務集中

    人員不足により一人の担当者が複数の業務を兼務することで、業務が特定の担当者に集中し、ナレッジ共有の機会が失われます。

属人化がもたらすリスク

経理業務の属人化は、企業経営に深刻な影響を及ぼす可能性があります。主なリスクは以下の通りです。
  • 業務継続性の危機

    担当者の急な休暇や退職時に業務が停止し、月次決算や税務申告の遅延につながります。引き継ぎが不十分な場合、処理ミスや漏れが発生し、財務報告の正確性を損なう恐れがあります。

  • 内部統制の脆弱化

    特定の担当者にしか確認できない処理が存在する状態では、不正やミスの発見が遅れ、企業のガバナンス体制に脆弱性が生まれます。

  • 業務効率化の停滞

    属人化した業務は改善が進みにくく、非効率な作業が固定化されます。担当者も「自分にしかできない」というプレッシャーから休暇を取りづらくなり、業務負荷が高まる悪循環に陥ります。

BPRによる経理業務標準化のアプローチ

経理業務の属人化を根本的に解消するには、BPRの手法を活用した業務標準化が有効です。ここでは、経理BPRを進める際の具体的なアプローチを説明します。

業務の見える化と現状分析

経理BPRの第一歩は、現在の業務を正確に把握することです。

業務フローの可視化では、各業務プロセスを「誰が」「いつ」「何を」「どのように」処理しているかを詳細に記録します。この際、担当者へのヒアリングだけでなく、実際の作業を観察することで、マニュアルには記載されていない暗黙のルールや工夫を発見できます。

業務の棚卸しでは、月次・年次で発生する全ての経理タスクをリストアップし、それぞれの作業時間、難易度、発生頻度を記録します。どの業務が特定の担当者に集中しているか、どこにボトルネックが存在するかを明らかにすることで、標準化の優先順位を判断する材料が得られます。

標準プロセスの設計

現状分析で明らかになった課題を踏まえ、誰でも同じ品質で実行できる標準プロセスを設計します。

プロセスの標準化では、業務手順を細分化し、各ステップで必要な判断基準を明文化します。例えば、請求書の処理であれば「受領→内容確認→承認→計上→支払」という流れの中で、各段階で何を確認すべきか、どのような場合にエスカレーションが必要かを具体的に定義します。

属人化を防ぐためには、業務の難易度に応じた階層化も重要です。定型的な処理は新人でも対応できるレベルに標準化し、専門的判断が必要な業務は明確な判断基準を設けることで、経験の浅い担当者でも適切に上司や専門家に相談できる仕組みを作ります。

また、例外処理のルールも標準化の対象です。取引先ごとの特例や過去の経緯による処理の違いを整理し、本当に必要な例外と、統一可能な業務を見極めることで、プロセス全体の複雑性を軽減できます。

システム活用による自動化と標準化の推進

経理業務の標準化は、システム活用によって効果が飛躍的に高まります。

経理システムやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入により、定型的なデータ入力や転記作業を自動化できます。人の手を介さずに処理が完結する部分を増やすことで、ヒューマンエラーを防ぎながら属人化のリスクも低減します。

ワークフローシステムの活用も標準化を支える重要な要素です。承認経路や処理順序をシステムに組み込むことで、担当者が変わっても同じプロセスで業務が進行します。また、処理の履歴がシステムに記録されることで、後から確認や監査がしやすくなり、業務の透明性も向上します。

クラウド型の経理システムを採用すれば、複数拠点での業務標準化も容易になります。本社と支社で異なる処理方法が混在している場合でも、統一されたシステム上で業務を行うことで、全社レベルでの標準化が実現します。

業務マニュアル化とナレッジ共有の実践

標準プロセスを定着させるには、実用的なマニュアル整備とナレッジの共有体制が不可欠です。

実用的な業務マニュアルの作成

経理業務のマニュアルは、単なる手順書ではなく、実務で本当に使える内容にすることが重要です。実用的なマニュアルを作成するためのポイントは以下の通りです。
  • 業務の目的と全体像を明記する

    なぜこの業務が必要なのか、どのような成果物を作成するのかを冒頭で説明することで、担当者が状況に応じた適切な判断をできるようにします。

  • 視覚的にわかりやすく説明する

    画面キャプチャや記入例を多用し、エラーが発生しやすいポイントや確認すべきチェック項目は強調表示することで、ミスを未然に防ぎます。

  • 定期的に見直しと更新を行う

    業務プロセスの変更やシステムのアップデートに合わせて更新し、常に最新の状態を保ちます。更新履歴を残すことで、手順が変わった理由を後から確認できるようにします。

ナレッジの蓄積と共有の仕組み

マニュアルでカバーしきれない実務的なノウハウは、組織全体で共有する仕組みを構築します。

ナレッジベースやFAQシステムを活用し、過去に発生したトラブルとその解決方法、よくある質問と回答を蓄積します。担当者が疑問を感じた際に、すぐに参照できる環境を整えることで、特定の担当者への質問集中を防ぎ、業務の自己解決率を高めます。

定期的な勉強会やミーティングの場を設け、担当者同士が知識を共有する機会を作ることも効果的です。ベテラン担当者が持つ暗黙知を言語化し、チーム全体のスキル向上につなげることができます。

また、業務の引き継ぎプロセスも標準化します。担当者の交代時に必要な情報を漏れなく伝達できるよう、引き継ぎチェックリストを用意し、一定期間の並行運用期間を設けることで、スムーズな業務移行を実現します。

経理BPR実施後の運用と継続的改善

業務標準化は一度実施すれば完了するものではありません。環境の変化に対応し、継続的に改善を重ねることで、効果を持続させることができます。

標準化後の定着と運用管理

新しい標準プロセスを現場に定着させるには、計画的な移行と丁寧なフォローが必要です。

標準化した業務の導入時には、十分な研修期間を設け、担当者が新しいプロセスに慣れる時間を確保します。いきなり全ての業務を切り替えるのではなく、優先度の高い業務から段階的に移行することで、現場の混乱を最小限に抑えられます。

運用開始後は、定期的にモニタリングを行い、標準プロセス通りに業務が進んでいるかを確認します。標準から逸脱した処理が発生している場合、その理由を分析し、プロセスに問題があれば改善し、担当者の理解不足であれば追加の教育を実施します。

業務品質を維持するためのKPI(重要業績評価指標)を設定することも有効です。処理時間、エラー率、期限遵守率などの指標を定期的に測定し、標準化の効果を可視化することで、改善の必要性や成果を客観的に評価できます。

PDCAサイクルによる継続的改善

経理業務を取り巻く環境は常に変化しており、標準プロセスも定期的な見直しが求められます。

四半期や半期ごとに業務プロセスのレビューを実施し、現場から上がってくる課題や改善提案を収集します。実際に業務を行う担当者の意見は、プロセス改善の貴重な情報源です。定期的な振り返りの場を設けることで、小さな問題が大きくなる前に対処できます。

法改正やシステム変更など、外部要因による業務変更が発生した際には、速やかに標準プロセスとマニュアルを更新します。変更内容を全担当者に周知し、必要に応じて追加研修を実施することで、業務品質の低下を防ぎます。

また、他部署の成功事例や業界のベストプラクティスにも目を向け、自社の経理業務に応用できる要素を積極的に取り入れます。継続的な学習と改善の姿勢が、長期的な業務効率化と品質向上につながります。

まとめ

経理業務の属人化解消は、業務継続性の確保と効率化を同時に実現する重要な取り組みです。BPRによる業務標準化は、現状の業務を可視化し、誰でも同じ品質で実行できるプロセスを設計することから始まります。

実用的なマニュアルの整備とナレッジ共有の仕組みを構築することで、標準化した業務を現場に定着させることができます。さらに、継続的なモニタリングと改善のサイクルを回すことで、環境変化に対応しながら業務品質を維持・向上させることが可能です。

経理業務の標準化は一朝一夕には実現しませんが、段階的に取り組むことで着実に成果を積み上げることができます。属人化のリスクを低減し、効率的で透明性の高い経理業務体制を構築することは、企業の持続的な成長を支える基盤となります。


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