人員管理やBPO導入を検討する際、「FTE」と「ヘッドカウント」という2つの指標に直面することがあります。どちらも人員を数える指標ですが、その意味と用途は大きく異なります。FTEは労働力の量を、ヘッドカウントは人数を測定する指標であり、適切に使い分けなければ、コスト試算の誤りや業務委託範囲の見誤りにつながる可能性があります。本記事では、FTEとヘッドカウントの違いを明確にし、BPO契約や人員管理の実務でどのように使い分けるべきかを解説します。正確な理解により、より精緻な人員計画と効率的な業務運営が実現できます。
FTEとヘッドカウントの基本的な違い
FTE(Full-Time Equivalent:フルタイム当量)とヘッドカウント(Head Count)は、どちらも組織の人員規模を把握するための指標ですが、その測定方法と意味するところが異なります。
ヘッドカウントとは
FTEとは
両者の決定的な違い
ヘッドカウントは「人の数」を、FTEは「労働力の量」を表します。多様な働き方が普及している現代では、ヘッドカウントだけでは実際の業務遂行能力を正確に把握できません。FTEを活用することで、時短勤務や複数の非常勤スタッフがいる組織でも、実質的な労働力を数値化できます。
FTEとヘッドカウントそれぞれの指標が適している場面
FTEとヘッドカウントは、目的や状況によって使い分けることが重要です。それぞれが最も効果を発揮する場面を理解しておきましょう。
ヘッドカウントが適している場面
ヘッドカウントは、物理的な人数が重要となる以下のような場面で有効です。
- 福利厚生や研修の計画: 健康診断の受診者数、社員食堂の座席数、研修参加者の把握など、一人ひとりに対して提供するサービスを計画する際
- オフィススペースの設計: デスクや会議室など、物理的なスペースの必要数を算出する場合
- 人事管理システムの規模決定: 給与計算システムのアカウント数など、人数ベースで課金されるサービスの契約時
- 組織図の作成: 部署の構成や人員配置を視覚的に示す際
FTEが適している場面
FTEは、業務量や生産性、コストを正確に把握する必要がある以下のような場面で効果を発揮します。
- 労働コストの算出: 人件費を正確に計算する際。フルタイム5名と週20時間勤務のパートタイム5名では、同じヘッドカウント10名でも労働力は大きく異なります。FTEで計算すれば、前者は5 FTE、後者は7.5 FTEとなり、実際のコスト構造を反映できます
- 業務量と人員配置の最適化: 特定の業務に必要な労働力を算出する際。「この業務には2 FTE必要」という表現により、フルタイム2名でも、パートタイム4名でも、適切な組み合わせでも対応可能であることが明確になります
- BPOの委託範囲とコスト算出: BPO導入時、委託する業務量をFTEで表現することで、ベンダーとの契約内容が明確になります。「1.5 FTE分の業務を委託」という表現は、具体的な作業量を示し、適正な価格交渉の基準となります
BPO導入時における両指標の使い分け
BPO契約では、FTEとヘッドカウントを適切に使い分けることで、より正確な委託範囲の設定とコスト管理が可能になります。
委託業務量の定義にはFTEを使用
移行前の現状把握では両指標を併用
契約形態による使い分け
BPO契約の形態によって、適切な指標は変わります。
| 契約形態 | 特徴 | 指標の使い方 |
|---|---|---|
| 成果報酬型契約 | 処理件数や成果に基づいて料金が決まる | FTEやヘッドカウントは参考値に留まる。想定される業務量をFTEで示すことで、ベンダーの見積もり精度が向上する |
| リソース提供型契約 | BPOベンダーから一定の人員を確保してもらう契約 | FTEベースでの定義が明確。「2 FTE分のリソースを提供」という契約により、必要な労働力を数値で管理できる |
| ハイブリッド型 | 固定費部分と変動費部分を組み合わせた契約 | 固定費の算出にFTEを、変動費の管理に処理件数などの別指標を用いる |
実務での計算例と注意点
FTEとヘッドカウントを実務で正確に活用するには、具体的な計算方法と注意点を理解しておく必要があります。
基本的な計算方法
FTEの計算式は以下の通りです。
FTE = 実際の労働時間 ÷ フルタイムの標準労働時間
例えば、フルタイムの週労働時間が40時間の企業で、以下のような人員構成の部署があるとします。
- 正社員(週40時間): 3名
- 時短勤務社員(週30時間): 2名
- パートタイム(週20時間): 4名
この場合のFTE計算は以下のようになります。
- 正社員: 3名 × (40÷40) = 3.0 FTE
- 時短勤務: 2名 × (30÷40) = 1.5 FTE
- パートタイム: 4名 × (20÷40) = 2.0 FTE
- 合計: 6.5 FTE
一方、ヘッドカウントは単純に3 + 2 + 4 = 9名となります。
複雑なケースでの計算
複数業務を兼務している場合
季節変動がある場合
計算時の注意点
基準となる標準労働時間の定義
有給休暇や休職の扱い
残業時間の扱い
よくある誤解と正しい理解
FTEとヘッドカウントに関しては、実務で誤解されやすいポイントがいくつか存在します。
誤解1: ヘッドカウントが多ければ生産性が高い
誤解2: FTEが低ければコストも低い
誤解3: FTEとヘッドカウントは相互に変換できる
誤解4: すべての業務でFTEが必要
まとめ
FTEとヘッドカウントは、それぞれ異なる目的で使用される人員管理の指標です。ヘッドカウントは物理的な人数を把握する際に、FTEは実質的な労働力やコストを測定する際に有効です。
BPO導入においては、委託業務量の定義や契約内容の明確化にFTEを活用することで、より精緻な契約設計が可能になります。一方、現状把握や移行計画では、ヘッドカウントも併用することで、関係者の把握や引き継ぎの計画が円滑に進みます。
両指標の違いと使い分けを正しく理解することで、人員計画の精度が向上し、BPO契約においても適切な委託範囲とコスト管理が実現できます。自社の状況や目的に応じて、適切な指標を選択し、効果的な人員管理と業務効率化を進めていきましょう。
関連記事: FTEの基本概念や計算方法についてはこちらの記事も参考にしてください。
「FTE(フルタイム当量)とは?BPO導入時に知っておくべき人員計算の基本」
基本的な理解を深めながら、自社の業務特性に応じたFTE活用を検討することで、より効果的な生産性向上につながります。



