FTEとヘッドカウントの違いとは?人員管理における使い分けと実務への活用法

FTEとヘッドカウントの違いとは?人員管理における使い分けと実務への活用法

2025.12.25
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人員管理やBPO導入を検討する際、「FTE」と「ヘッドカウント」という2つの指標に直面することがあります。どちらも人員を数える指標ですが、その意味と用途は大きく異なります。FTEは労働力の量を、ヘッドカウントは人数を測定する指標であり、適切に使い分けなければ、コスト試算の誤りや業務委託範囲の見誤りにつながる可能性があります。本記事では、FTEとヘッドカウントの違いを明確にし、BPO契約や人員管理の実務でどのように使い分けるべきかを解説します。正確な理解により、より精緻な人員計画と効率的な業務運営が実現できます。

FTEとヘッドカウントの基本的な違い

FTE(Full-Time Equivalent:フルタイム当量)とヘッドカウント(Head Count)は、どちらも組織の人員規模を把握するための指標ですが、その測定方法と意味するところが異なります。

ヘッドカウントとは

ヘッドカウントは、組織に所属する人数をシンプルに数える指標です。雇用形態や勤務時間に関わらず、1人を1人として数えます。正社員、パートタイム、アルバイト、派遣社員など、すべての従業員を単純に合計した数値です。

例えば、正社員5名、パートタイム3名、派遣社員2名が在籍している部署のヘッドカウントは10名となります。

FTEとは

一方、FTEは労働時間を基準にした人員の測定方法です。フルタイム勤務を「1」とし、それ以外の勤務形態は労働時間の比率に応じて換算します。

例えば、フルタイムが週40時間勤務の企業で、週20時間勤務のパートタイム従業員は「0.5 FTE」として計算されます。この方法により、実際の労働力を正確に把握できます。

両者の決定的な違い

ヘッドカウントは「人の数」を、FTEは「労働力の量」を表します。多様な働き方が普及している現代では、ヘッドカウントだけでは実際の業務遂行能力を正確に把握できません。FTEを活用することで、時短勤務や複数の非常勤スタッフがいる組織でも、実質的な労働力を数値化できます。

FTEとヘッドカウントそれぞれの指標が適している場面

FTEとヘッドカウントは、目的や状況によって使い分けることが重要です。それぞれが最も効果を発揮する場面を理解しておきましょう。

FTEとヘッドカウントそれぞれの指標が適している場面

ヘッドカウントが適している場面

ヘッドカウントは、物理的な人数が重要となる以下のような場面で有効です。

  • 福利厚生や研修の計画: 健康診断の受診者数、社員食堂の座席数、研修参加者の把握など、一人ひとりに対して提供するサービスを計画する際
  • オフィススペースの設計: デスクや会議室など、物理的なスペースの必要数を算出する場合
  • 人事管理システムの規模決定: 給与計算システムのアカウント数など、人数ベースで課金されるサービスの契約時
  • 組織図の作成: 部署の構成や人員配置を視覚的に示す際

FTEが適している場面

FTEは、業務量や生産性、コストを正確に把握する必要がある以下のような場面で効果を発揮します。

  • 労働コストの算出: 人件費を正確に計算する際。フルタイム5名と週20時間勤務のパートタイム5名では、同じヘッドカウント10名でも労働力は大きく異なります。FTEで計算すれば、前者は5 FTE、後者は7.5 FTEとなり、実際のコスト構造を反映できます
  • 業務量と人員配置の最適化: 特定の業務に必要な労働力を算出する際。「この業務には2 FTE必要」という表現により、フルタイム2名でも、パートタイム4名でも、適切な組み合わせでも対応可能であることが明確になります
  • BPOの委託範囲とコスト算出: BPO導入時、委託する業務量をFTEで表現することで、ベンダーとの契約内容が明確になります。「1.5 FTE分の業務を委託」という表現は、具体的な作業量を示し、適正な価格交渉の基準となります

BPO導入時における両指標の使い分け

BPO契約では、FTEとヘッドカウントを適切に使い分けることで、より正確な委託範囲の設定とコスト管理が可能になります。

委託業務量の定義にはFTEを使用

BPO契約において委託する業務量を定義する際は、FTEを用いることが推奨されます。『カスタマーサポート業務を3 FTE分委託する』という表現により、ベンダー側は業務量の規模を把握できます。

これにより、ベンダーは自社の人員配置を柔軟に決定できます。例えば、フルタイムスタッフ3名で対応するか、フルタイム2名とパートタイム2名の組み合わせで対応するかは、ベンダーの裁量となります。発注側にとっては、受けるサービスの量が保証される一方、ベンダーは人員配置を最適化する裁量を持てます。

移行前の現状把握では両指標を併用

BPO導入前の現状分析では、ヘッドカウントとFTEの両方を把握することが重要です。

現在の業務に携わっているヘッドカウントを把握することで、関係者の人数や引き継ぎの対象者が明確になります。同時に、その業務に投入されている実質的な労働力をFTEで算出することで、BPOベンダーに委託すべき業務量が正確に見えてきます。

例えば、ある業務にヘッドカウント5名が関わっているものの、それぞれが業務時間の30%しかその業務に充てていない場合、実質的には1.5 FTE分の業務量となります。この認識があれば、過剰な委託契約を避けられます。

契約形態による使い分け

BPO契約の形態によって、適切な指標は変わります。

契約形態特徴指標の使い方
成果報酬型契約 処理件数や成果に基づいて料金が決まる FTEやヘッドカウントは参考値に留まる。想定される業務量をFTEで示すことで、ベンダーの見積もり精度が向上する
リソース提供型契約 BPOベンダーから一定の人員を確保してもらう契約 FTEベースでの定義が明確。「2 FTE分のリソースを提供」という契約により、必要な労働力を数値で管理できる
ハイブリッド型 固定費部分と変動費部分を組み合わせた契約 固定費の算出にFTEを、変動費の管理に処理件数などの別指標を用いる

実務での計算例と注意点

FTEとヘッドカウントを実務で正確に活用するには、具体的な計算方法と注意点を理解しておく必要があります。

基本的な計算方法

FTEの計算式は以下の通りです。

FTE = 実際の労働時間 ÷ フルタイムの標準労働時間

例えば、フルタイムの週労働時間が40時間の企業で、以下のような人員構成の部署があるとします。

  • 正社員(週40時間): 3名
  • 時短勤務社員(週30時間): 2名
  • パートタイム(週20時間): 4名

この場合のFTE計算は以下のようになります。

  • 正社員: 3名 × (40÷40) = 3.0 FTE
  • 時短勤務: 2名 × (30÷40) = 1.5 FTE
  • パートタイム: 4名 × (20÷40) = 2.0 FTE
  • 合計: 6.5 FTE

一方、ヘッドカウントは単純に3 + 2 + 4 = 9名となります。

複雑なケースでの計算

実務では、より複雑な状況に対応する必要があります。

複数業務を兼務している場合

ある従業員が複数の業務を担当している場合、各業務に配分される労働時間をFTEで表現できます。週40時間勤務の社員が、業務Aに60%、業務Bに40%の時間を割いている場合、業務Aには0.6 FTE、業務Bには0.4 FTE分の労働力が投入されていることになります。

季節変動がある場合

繁閑差が大きい業務では、期間を区切ってFTEを算出することが有効です。例えば、年末調整業務は11月〜1月に集中するため、「年間平均0.5 FTE」と「繁忙期1.5 FTE」の両方を把握しておくと、BPO委託時の契約設計に役立ちます。

計算時の注意点

FTE計算では、以下の点に注意が必要です。

基準となる標準労働時間の定義

フルタイムの標準労働時間を何時間とするかは、企業や契約によって異なります。週40時間が一般的ですが、業界や職種によっては週35時間や週37.5時間を基準とする場合もあります。BPOベンダーとの契約では、この基準を明確に定義しておくことが重要です。

有給休暇や休職の扱い

年間FTEを算出する際、有給休暇や病欠をどう扱うかは判断が分かれます。契約上の労働時間を基準とする方法と、実労働時間を基準とする方法があり、目的に応じて使い分けます。BPO委託の見積もりでは、実労働時間ベースの方が実態に即した契約となります。

残業時間の扱い

FTEは通常、所定労働時間を基準に計算します。残業時間を含めるかどうかは、分析の目的によって判断します。恒常的な残業が発生している場合は、それを含めたFTEを算出することで、真の業務量が明らかになります。

よくある誤解と正しい理解

FTEとヘッドカウントに関しては、実務で誤解されやすいポイントがいくつか存在します。

誤解1: ヘッドカウントが多ければ生産性が高い

組織の規模をヘッドカウントだけで判断すると、実態を見誤る可能性があります。ヘッドカウント20名の部署と10名の部署を比較した場合、前者が必ずしも高い生産性を持つとは限りません。

前者がパートタイムスタッフ中心で10 FTE、後者がフルタイム中心で10 FTEであれば、実質的な労働力は同じです。生産性を評価する際は、ヘッドカウントではなくFTEを基準とすることで、より正確な分析が可能になります。

誤解2: FTEが低ければコストも低い

FTEが低いことは、必ずしもコスト削減を意味しません。例えば、5 FTEの業務を、フルタイム5名で対応する場合と、パートタイム10名で対応する場合では、後者の方が採用コスト、教育コスト、管理コストが増加する可能性があります。

BPO導入を検討する際も、単純にFTE数だけでコスト比較をするのではなく、品質管理、コミュニケーションコスト、リスク管理なども含めた総合的な判断が必要です。

誤解3: FTEとヘッドカウントは相互に変換できる

FTEからヘッドカウントへ、またはその逆への単純な変換はできません。「3 FTEだからヘッドカウントは3名」とは限らず、フルタイム2名とパートタイム2名の4名かもしれません。

BPO契約で「3 FTE分の業務を委託」と記載されていても、ベンダーが実際に何名のスタッフを配置するかは、ヘッドカウントとしては確定しません。サービスレベルや業務の性質によって、適切な人員配置は変わります。

誤解4: すべての業務でFTEが必要

すべての人員管理にFTEを使う必要はありません。目的に応じて適切な指標を選択することが重要です。

例えば、緊急連絡網の作成や安全管理では、実際に現場にいる人数(ヘッドカウント)が重要です。一方、予算策定やBPO委託範囲の決定では、FTEが適しています。両指標の特性を理解し、状況に応じて使い分けることが、効果的な人員管理につながります。

まとめ

FTEとヘッドカウントは、それぞれ異なる目的で使用される人員管理の指標です。ヘッドカウントは物理的な人数を把握する際に、FTEは実質的な労働力やコストを測定する際に有効です。

BPO導入においては、委託業務量の定義や契約内容の明確化にFTEを活用することで、より精緻な契約設計が可能になります。一方、現状把握や移行計画では、ヘッドカウントも併用することで、関係者の把握や引き継ぎの計画が円滑に進みます。

両指標の違いと使い分けを正しく理解することで、人員計画の精度が向上し、BPO契約においても適切な委託範囲とコスト管理が実現できます。自社の状況や目的に応じて、適切な指標を選択し、効果的な人員管理と業務効率化を進めていきましょう。


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