カスタマーサポートやコンタクトセンターの応対品質向上において、AIを活用したロールプレイング(ロープレ)が活用され始めています。しかし、AIロープレを導入しても期待した効果が得られないケースも見られます。その理由の一つとして、応対品質の評価基準が自社の業務に適した形で設定されていないケースが挙げられます。AIロープレの効果を左右する重要な要素の一つが「評価」の部分です。応対品質評価にAIを活用する際には、確かな評価基準とナレッジが不可欠です。
本記事では、CX(顧客体験)向上につながるAIロープレを成功に導く応対品質評価の重要性と、評価基準構築における選択肢についてご紹介します。
コンタクトセンターにおける応対品質評価の重要性
コールセンターやコンタクトセンターの応対品質は、顧客満足度や企業イメージに直結する重要な要素です。しかし、応対品質を適切にチェックし、継続的に向上させることは容易ではありません。
従来の応対品質評価では、スーパーバイザー(SV)やクオリティマネージャー(QM)が通話音声を聴き、主観的な判断で評価を行うケースが多く見られました。この方法では、評価者によって基準がばらつき、オペレーターへのフィードバックの質にも差が生じてしまいます。
また、評価にかかる工数も大きな課題です。多数のオペレーターが在籍する大規模センターでは、すべての通話を評価することは現実的ではなく、サンプリングによる評価が中心となるケースが多くあります。このような状況では、応対品質の全体像を正確に把握することが難しく、効果的な改善活動につなげることが困難になります。
特に、拠点が複数に分かれている場合や、繁閑差によって採用人数に変動がある環境では、拠点ごとに評価品質が異なったり、安定的な育成環境を構築できなかったりする課題も生じます。
応対品質を客観的かつ効率的に評価できる仕組みの確立が、コンタクトセンター運営における重要な課題となっているのです。
AI活用が進む応対品質評価の現状と課題
近年、AI技術の活用により、応対品質評価の自動化や効率化を目指す取り組みが進んでいます。音声認識技術や自然言語処理技術を活用することで、通話内容を自動的に分析し、評価を行うソリューションが登場しています。
AIによる評価には、いくつかのメリットがあります。まず、評価者による個人差を抑え、一貫した基準での評価が可能になります。同じ基準で評価を行えるため、評価のばらつきを抑えることができます。また、評価結果をスコア化することで、オペレーターの成長を可視化しやすくなります。さらに、評価にかかる時間を大幅に削減できるため、より多くの通話を評価対象とすることも可能です。
しかし、AI活用にも課題があります。最も重要なのは、「何を基準に評価するか」という評価軸の設定です。AIはあくまでツールであり、適切な評価基準がなければ、正確な評価を行うことはできません。
また、コンタクトセンターの業務内容は多岐にわたり、業種や業態によって求められる応対品質も異なります。画一的な評価基準では、自社の業務特性に合った評価ができない可能性があります。AI技術という「箱」があっても、その中に入れる「評価基準」という中身がなければ、AIの力を十分に活かすことはできないのです。このような体系化された評価基準を「応対品質ナレッジ」と呼びます。
AIロープレ成功の鍵を握る「評価基準」の重要性
AIを活用したロールプレイング(AIロープレ)は、オペレーターのスキル向上に有効な手段として注目されています。AIがお客様役となり、オペレーターは実際の業務に近い環境で練習を重ねることができます。
しかし、AIロープレの効果を最大化するためには、適切な評価基準が不可欠です。評価基準が曖昧であれば、オペレーターは何が良くて何が悪いのかを理解できず、効果的なコーチングやスキル向上につながりません。
評価基準を設定する際には、以下のような観点が重要になります。
第一印象では、挨拶や名乗りが適切か、声のトーンや話し方に好感が持てるかを評価します。電話応対において第一印象は顧客の満足度に大きく影響するため、この要素を明確に評価できることが重要です。
話し方においては、言葉遣いや説明のわかりやすさ、相槌や返事のタイミングなどを確認します。顧客にとって理解しやすく、安心感を与えるコミュニケーションができているかを評価する必要があります。
業務遂行能力では、必要な情報を正確にヒアリングできているか、適切な手順で業務を進められているかを見ます。業務特性に応じて、評価項目をカスタマイズできることも重要なポイントです。
共感性も大切な評価軸です。顧客の気持ちに寄り添った対応ができているか、親身な姿勢が感じられるかといった点を評価することで、顧客満足度の高いサポートを実現できます。
これらの評価基準を明確に定義し、AIロープレに組み込むことで、オペレーターは具体的な改善点を理解し、効果的にスキルアップすることができるのです。
応対品質評価基準を構築する選択肢
AIロープレを導入する際、多くの企業が直面するのが「評価基準をどう設定するか」という課題です。評価基準を構築する方法としては、いくつかの選択肢があります。代表的なものとして、自社で構築する方法と、専門企業と連携する方法があります。
自社で評価基準を構築する
専門企業のナレッジを活用する
まとめ
AIを活用した応対品質評価やロールプレイングは、コンタクトセンターの品質向上に大きな可能性を持っています。しかし、技術だけでは十分な効果は得られません。AIロープレ成功の重要な要素の一つは、確かな評価基準です。
評価基準を構築する際には、自社で一から作り上げる方法と、専門的なナレッジを持つ企業と連携する方法があります。それぞれにメリットがあり、自社の状況や課題、リソースに応じて適切な選択をすることが大切です。
評価基準という「中身」がしっかりしていてこそ、AI技術という「箱」は真価を発揮します。拠点が複数ある場合や、安定的な育成環境を構築したい場合、管理工数を削減したい場合などは、専門企業との連携も有効な選択肢の一つとなるでしょう。
コンタクトセンターの応対品質向上にお悩みの際は、技術面だけでなく、評価基準をどのように構築するかという観点からも検討してみることをお勧めします。適切な評価基準に基づくAI活用により、オペレーターのスキル向上と顧客満足度の向上を同時に目指すことができるでしょう。



