データエントリー業務の効率化|AI×人的作業の最適解

データエントリー業務の効率化|AI×人的作業の最適解

2025.11.06
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データエントリー業務の効率化は、多くの企業が直面する重要な経営課題です。膨大な時間とコストがかかるデータエントリー作業を、いかに正確かつ迅速に処理するかが問われています。近年、AIOCR(AI搭載光学文字認識)とRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を組み合わせた自動化技術が注目を集めています。これらの技術を活用することで、データエントリーの効率化と品質向上の実現が期待できます。本記事では、AIOCRとRPAによるデータエントリー自動化の仕組みと、効率化を実現するための実践的なアプローチについて解説します。

データエントリー業務が抱える課題

企業活動において、データエントリー(Data Entry)業務は日々大量に発生します。請求書や発注書の処理、顧客情報の登録、アンケート結果の入力など、多岐にわたる場面でデータ入力作業が必要とされています。

従来の手作業によるデータエントリーには、作業時間の長さという根本的な課題があります。一件ずつ目視で確認しながら入力する作業は時間がかかり、人件費の負担も大きくなります。

人的ミスとコストの問題

長時間の単純作業は、入力ミスや転記ミスを招きやすくなります。疲労による集中力の低下は避けられず、数字の打ち間違いや項目の入れ違いといったヒューマンエラーが発生します。これらのミスを防ぐために確認体制を組むと、さらに工数が増加してしまいます。

繁忙期には処理が追いつかず、納期遅延のリスクも高まります。特定の担当者に業務が集中する属人化も深刻で、その人が不在の際には業務が滞る事態も起こりえます。

こうした課題を解決し、データエントリー業務の効率化を図るために、自動化技術の導入が有効な選択肢となっています。

AIOCRによる文字認識の自動化

AIOCR(AI Optical Character Recognition)は、AI技術を搭載した光学文字認識システムです。従来のOCRに機械学習やディープラーニングの技術を組み込むことで、認識精度の改善が進んでいます。

紙の書類やPDF、画像ファイルから文字情報を自動で読み取り、編集可能なデジタルデータに変換できます。請求書、納品書、申込書、契約書など、さまざまな書類に対応可能です。

AIOCRの特徴と活用場面

従来のOCRとの違いは、学習機能による認識精度の向上です。読み取りを繰り返すことで、手書き文字や癖のある書体への対応が可能になります。また、書類のレイアウトを理解し、項目名と値を判別する機能も備えています。

フォーマットが統一された定型書類では特に効果を発揮します。請求書であれば、会社名、請求番号、金額、日付といった項目を抽出し、構造化されたデータとして出力できます。

データエントリーの入力工程において、AIOCRは書類からのデータ抽出という最初のステップを自動化します。これにより、人手による一次入力作業を削減できる可能性があります。

RPAによる入力作業の自動化

RPA(Robotic Process Automation)は、人間がパソコン上で行う定型作業を、ソフトウェアロボットが代行する技術です。データエントリー業務において、RPAは複数のシステム間でのデータ転記や、繰り返し発生する入力作業の自動化に活用されています。

RPAが得意とするのは、明確なルールに基づいて実行できる作業です。特定のフォルダに保存されたファイルを開く、データを抽出して所定の形式に整形する、基幹システムやデータベースへの入力を行うといった作業を自動化できます。

AIOCRとRPAの連携による効率化

AIOCRとRPAを組み合わせることで、データエントリー業務の効率化が期待できます。AIOCRが書類から読み取ったデータを、RPAが自動で基幹システムに入力するという一連の流れを構築できます。

例えば、請求書処理では次のような自動化が可能です。AIOCRが請求書から必要項目を抽出し、RPAがそのデータを会計システムに入力します。さらに、データの妥当性チェックや承認ワークフローへの連携も自動化できます。

ただし、書類のフォーマットが多様な場合や、複数の情報を総合的に判断する必要がある業務では、人間による処理が求められます。
このため、自動化の範囲を適切に設定することが重要です。

自動化と人的作業の最適な組み合わせ

データエントリー業務の効率化では、AI技術による自動化と人間の作業を適切に組み合わせることが重要です。それぞれの強みを活かした役割分担により、効率と品質の両立が可能になります。

AIとRPAは、大量の定型データを高速かつ正確に処理することに優れています。一方で、人間は状況に応じた柔軟な判断や、文脈を理解した対応を得意としています。

AI技術が適している業務

フォーマットが統一された書類の読み取り、決まったルールに基づくデータ入力、定期的に繰り返される処理などは、自動化による効果が高い領域です。処理件数が多く、24時間対応が求められる業務でも、自動化のメリットを発揮できます。

人的作業が必要な業務

書類の種類が多様でフォーマットが統一されていない場合、手書き文字が判読困難な場合、データの内容に疑義があり確認が必要な場合などは、人間の判断が求められます。

また、申込内容の不備に関する問い合わせ対応や、例外的なケースへの対処、複数の情報を総合的に判断する必要がある業務なども、人間が担当する領域となります。業務改善のための提案や、新しいパターンへの対応ルール作成なども、人間ならではの役割です。

ハイブリッド体制の構築

効果的なアプローチは、AIが一次処理を行い、人間が確認・判断を担当する二段階の体制です。読み取り結果の信頼性を判断するための基準を設け、基準を満たすデータは自動処理、基準に満たないデータは人間が確認するという仕組みを構築できます。

重要度やリスクに応じて確認の深さを調整することも有効です。金額の大きい取引や重要な契約書類については人間による確認を必須とし、定型的な小額取引は抽出チェックとするなど、メリハリをつけた運用が可能です。

導入と運用のポイント

データエントリー業務の自動化を成功させるには、段階的なアプローチと適切な導入方法の選択が重要です。

段階的な導入プロセス

いきなり大規模な導入を行うのではなく、小さく始めて徐々に拡大していく方法が効果的です。まず、業務プロセス全体を可視化し、どの工程が自動化に適しているかを見極めます。定型的で繰り返し発生する業務、処理量が多い業務、ミスが発生しやすい業務などが自動化の候補となります。

効果が見込める一部の業務から試験的に導入を開始します。パイロットプロジェクトで実際の効果を測定し、課題を洗い出します。処理時間の短縮率、エラー率の変化、コスト削減効果などを定量的に評価することが重要です。

パイロット導入で得られた知見をもとに、求められる認識精度が確認できた場合には、自動化の範囲を検討することができます。その際、システムの設定調整や運用ルールの見直しを継続的に行い、最適化を図ります。

確認作業についても効率化を検討できます。リスクの高いデータや金額の大きい取引など、重要度に応じて確認の深さを調整することで、全体の作業負荷を適切にコントロールできます。

エラー検出と修正のフロー設計

自動化システムを導入する際、エラー検出と修正の仕組みを適切に設計することが重要です。AIOCRやRPAは一定の精度で処理を行いますが、完璧ではありません。

読み取り結果の信頼性を判断するための基準を設け、人間が確認する仕組みを構築することが考えられます。例えば、一定の基準を設けて自動処理と人間確認を振り分けるといったルールを設定できます。

データの整合性チェックも重要です。自動入力されたデータに対して、AIによる異常値検出や論理チェックを組み合わせることで、品質向上に寄与します。

申込書や請求書の内容に不備がある場合の対応については、ケースに応じて適切な処理方法を設計する必要があります。問い合わせが必要な場合のエスカレーションルールを明確にし、迅速に対応できる体制を整えます。

重要度の高いデータについては、リスクに応じた確認体制を検討することが推奨されます。自動化と人間の確認を適切に組み合わせることで、効率と品質のバランスを取ることができます。

導入方法の選択

データエントリー業務の効率化には、いくつかのアプローチがあります。自社でシステムを構築・運用する方法では、業務の特性に合わせたカスタマイズが可能です。

近年では、クラウド型のAIOCRやRPAサービスが充実しており、比較的導入しやすくなっています。サブスクリプション型の料金体系を採用しているサービスでは、必要な機能に応じたプラン選択が可能です。

ノーコード操作に対応したRPAツールや、API連携が容易なAIOCRサービスを選ぶことで、専門的なプログラミング知識がなくても導入を進められる場合があります。

また、データエントリー業務そのものを外部に委託する方法もあります。自社でシステム構築や運用を行うリソースが限られている場合や、繁忙期の業務量変動に柔軟に対応したい場合などに、検討される選択肢となります。

導入方法の選択にあたっては、自社の業務量、求められる精度、予算、運用体制などを総合的に考慮することが重要です。それぞれの方法には特徴があるため、自社の状況に合ったアプローチを選択することが求められます。

まとめ

データエントリー業務の効率化は、AIOCRとRPAといった自動化技術の活用により実現が期待できます。書類からのデータ抽出、システムへの入力、データチェックといった工程を自動化することで、作業時間の短縮とミスの削減につながります。

重要なのは、自社の業務特性を見極め、適切な自動化の範囲を設定することです。すべてを自動化するのではなく、定型業務は自動化し、判断を伴う業務や例外対応は人間が担当するという役割分担が効果的です。

段階的な導入により、リスクを抑えながら効果を検証できます。パイロットプロジェクトで得られた知見をもとに、継続的な改善を行うことが成功の鍵となります。自動化技術と適切な処理体制を組み合わせることで、データエントリー業務の効率化を実現し、より付加価値の高い業務に人的リソースを集中できる環境を整えることができるでしょう。

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