コンタクトセンターを立ち上げたいが「何から始めればいいのかわからない」「どんな準備が必要なのか不安」という声を多くいただきます。コンタクトセンターの構築は、単に電話回線とスタッフを用意すれば良いというものではありません。明確なコンセプト設計から現状調査、詳細な設計、構築、そして運用開始まで、体系的なアプローチが成功の鍵となります。本記事では、コンタクトセンターの立ち上げに必要な5つのステップを実践的に解説し、各段階で検討すべきポイントや注意点を具体的にご紹介します。初めてコンタクトセンターを立ち上げる方でも、この記事を読めば全体像を把握し、計画的に進められるようになります。
コンタクトセンター立ち上げの全体像
コンタクトセンターの立ち上げは、多岐にわたる検討要素を明確化しながら進める必要があります。立ち上げプロジェクトは5つの主要ステップで構成され、各ステップが相互に連携しながら進行します。
立ち上げの5つのステップは以下の通りです。
-
コンセプト設計:センター全体の目的とゴールを明確化
-
現状調査:既存体制の把握と課題の洗い出し
-
設計:業務プロセスや組織体制の詳細設計
-
構築:システム導入とスタッフ採用・研修
-
運用開始:KPI管理と継続的な改善活動
立ち上げに必要な期間
STEP1 コンセプト設計|センターの方向性を定める
コンタクトセンター立ち上げの最初のステップは、センター全体のコンセプトを明確にすることです。ここで定めるKGI(重要目標達成指標)が、その後の意思決定の重要な基準となります。
KGI設定の重要性
「コンタクトセンター全体として、何がゴールなのか」を明文化する必要があります。企業として売上と利益の維持向上を果たすため、以下の問いに答えましょう。
- コンタクトセンターでは顧客満足度を重視すべきなのか
- 生産性を最優先にさせコストを減らすことがゴールなのか
- 売上貢献を主目的とするのか
この段階を曖昧にしてしまうと、後々の運営方針が揺らぐ原因となります。
全員への浸透が重要
設定したコンセプトは、管理するスタッフからコミュニケーターまで、センターに従事する全員が理解し共有することが重要です。
ゴールが曖昧なままスタートすると、その時々の状況や優先度によって運営方針が揺らぎます。結果として顧客満足の低下や、スタッフ自身のモチベーション低下にも繋がってしまいます。明確なコンセプトがあれば、日々の判断基準が明確になり、一貫性のある運営が可能になります。
STEP2 現状調査とSTEP3 設計|課題を発見し解決策を設計する
現状の体制を把握し、課題を明確にした上で、解決に向けた具体的な設計を行います。
現状調査で把握すべき主な項目
コンタクトセンターの構築にあたり、まずは現状の体制について調査を行い、把握しておく必要があります。既存コンタクトセンターの有無やセンターの目的によっても変わりますが、主な調査項目は以下の通りです。
| 調査項目 | 確認内容例 |
|---|---|
| 運用プロセス | 現在の業務フローと効率性 |
| マネジメント | 管理体制とKPIの設定状況 |
| 組織体制 | 人員配置と役割分担 |
| 教育トレーニング | 研修プログラムの有無と内容 |
| システム関連 | 使用中のツールとインフラ |
これらの調査を通じて、課題の抽出・明確化を行います。
4つの観点から設計を進める
1. 業務プロセス設計
2. マネジメント設計
3. 組織体制設計
4. 人材育成設計
STEP4 構築|センターの実装
設計された要件定義に基づき、実際にセンターの構築・実装を行います。この段階では、システム構築、業務運用の整備、人材の採用・育成を進めていきます。
システム構築のポイント
電話(PBX)設置
ネットワーク設計
顧客履歴・CRMツールの導入
業務運用構築とマニュアル整備
設計された業務プロセスに必要なマニュアル作成や、業務ボリュームに合わせたシフトパターンを作成します。以下は作成が必要なマニュアルの一例です。
- コミュニケーター用マニュアル(手順書・FAQ・スクリプト)
- 管理者エスカレーション対応マニュアル
- 業務システム操作手順
- 電話機・PBX操作手順
- シフト管理・勤怠管理手順
- KPI管理、品質管理の運用手順
作成済と未作成を管理するフローも用意し、立ち上げまでに漏れがないよう進捗管理を徹底しましょう。
スタッフ採用と研修プログラム
組織体制設計で定めた人材要件に基づき、募集・採用を行います。並行して、以下の研修プログラムを実施します。
- 情報セキュリティ・コンプライアンス研修
- 応対品質研修
- 業務研修
- ロールプレイング研修
- OJT
- 見極めテスト
- 補習(テスト結果で取得度合が低いスタッフ向け)
- 管理者向け研修
採用から研修、デビューまでのスケジュールを計画し、運用開始日に間に合うよう進めましょう。
STEP5 運用開始と継続的改善|PDCAサイクルの実践
設計・構築を経て運用を開始したら、継続的な改善活動が重要です。KPI管理とPDCAサイクルを回し続けることで、コンタクトセンターの価値を高めていきます。
KPI管理と定期的なモニタリング
設定したKGIに向けてコンタクトセンター運用を開始したら、マネジメントすべきKPIを元に定期的な測定・分析を行います。目標達成のためのPDCAサイクルが、コンタクトセンターの成功には不可欠です。
ただ運用するだけではなく、定期的にモニタリングを行い、業務の実施状況を確認することが重要です。応対品質、処理時間、顧客満足度など、設定したKPIを日次・週次・月次で確認し、課題があれば迅速に対策を講じます。
継続的な改善体制の構築
コンタクトセンターは立ち上げて終わりではありません。顧客のニーズや商品・サービスの変化に応じて、継続的に改善していく必要があります。改善のポイントとして以下が挙げられます。
- 応対品質の向上(モニタリングとフィードバック)
- 業務効率化(プロセス見直し、システム改善)
- スタッフ育成(継続的な研修、キャリアパス設計)
- 顧客満足度向上(VOC分析と施策立案)
PDCAサイクルを回し続けることで、コンタクトセンターの価値を継続的に高めることができます。
まとめ|成功するコンタクトセンター立ち上げの3つのポイント
コンタクトセンターの立ち上げを成功させるためには、体系的なアプローチが不可欠です。本記事でご紹介した5つのステップを実行することで、抜け漏れのない立ち上げが実現します。
ここでは特に重要な3つのポイントをご紹介します。
1. 明確なコンセプト設計とKGI設定
最初に「何を目指すのか」を明確にし、全スタッフに共有することが、一貫性のある運営の基盤となります。
2. 4つの観点からの網羅的な設計
業務プロセス、マネジメント、組織体制、人材育成の4つの観点から設計することが重要です。
3. 継続的な改善体制の構築
立ち上げはゴールではなくスタートです。KPI管理とPDCAサイクルを回し続けることで、センターの価値を高め続けることができます。
コンタクトセンターの立ち上げは、企業の顧客接点として極めて重要なプロジェクトです。本記事の内容を参考に、計画的に進めていただければ幸いです。
本記事ではコンタクトセンター立ち上げの全体像と重要ポイントを解説しました。実際の立ち上げプロジェクトを進める際には、「コンタクトセンター運用ノウハウ -基礎編-」の資料をダウンロードしてご活用ください。



