ABMとは?アカウントベースドマーケティングで実現する効率的な営業戦略

ABMとは?アカウントベースドマーケティングで実現する効率的な営業戦略

2025.07.02
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近年、BtoB企業において注目を集めているABM(アカウントベースドマーケティング)。従来のマーケティング手法とは異なり、特定の企業アカウントに焦点を当てた営業戦略として多くの企業が導入を検討しています。しかし「ABMとは具体的に何なのか」「どのような効果が期待できるのか」といった基本的な疑問を持つマーケティング担当者も少なくありません。本記事では、ABMの基礎知識から実践的な導入方法、効率的な営業戦略として活用するポイントまで、分かりやすく解説します。

ABM(アカウントベースドマーケティング)とは

ABM(Account Based Marketing)は、特定の重要顧客や見込み顧客企業を「アカウント」として明確に定義し、そのアカウントに対して個別最適化されたマーケティング活動を展開する戦略です。

従来のマーケティングでは、より多くのリードを獲得することに重点を置いていました。一方、ABMでは質の高い特定のアカウントに絞り込み、営業チームと連携しながら深くアプローチしていく点が大きな特徴となります。

ABMが注目される背景

BtoB市場では、購買決定に関わる関係者が複数存在し、検討期間も長期化する傾向があります。このような環境下では、画一的なマーケティング施策よりも、各アカウントの特性や課題に合わせたきめ細かなアプローチが求められるようになりました。

また、デジタル化の進展により顧客データの収集・分析が容易になったことも、ABM普及の追い風となっています。

ABMの基本的な仕組みと流れ

ABMを効果的に実践するためには、体系的なプロセスに沿って進めることが重要です。

ABMの対象となるターゲットアカウントの選定

最初のステップは、重点的にアプローチするアカウントの選定です。以下の観点から総合的に判断します。
  • 売上貢献度の高さ

  • 成約可能性

  • 戦略的重要性

  • 競合他社の状況

一般的には20~30社程度のアカウントに絞り込むケースが多く見られますが、多い場合は100社以上になる場合もあります。
選定の際は、将来的な取引拡大の可能性やLTV(顧客生涯価値)も考慮に入れることが重要です。

アカウント情報の収集と分析

選定したアカウントについて、業界動向、組織体制、事業上の課題、意思決定の流れなどを詳細にリサーチします。選定したアカウント内で影響力を持つキーパーソンの特定も並行して行います。この段階で蓄積した情報が、後の個別最適化された戦略立案の土台となります。

情報収集では、公開されている企業情報だけでなく、業界レポートや展示会での情報、既存の取引関係から得られる知見なども活用します。

個別化されたマーケティング施策の実行

蓄積した情報をもとに、各アカウントの課題や関心事に特化したコンテンツや接触手法を企画し、実行します。セミナー開催、調査レポートの提供、業界イベントへの招待など、アカウントの状況に応じた多角的なアプローチを組み合わせることが効果的です。

重要なのは、すべての接触ポイントで一貫したメッセージを発信することです。データに基づいた提案の信頼性を高めるためにも、統一感のあるコミュニケーションを最適なチャネルで展開していきましょう。

従来のマーケティングとABMの違い

ABMと従来のマーケティング手法には、アプローチの根本的な違いがあります。

リード重視からアカウント重視のマーケティングへ

従来のマーケティングでは、可能な限り多くのリードを獲得し、その中から有望な見込み顧客を見つけ出すという「広く浅く」のアプローチが主流でした。

ABMでは、あらかじめ選定した重要アカウントに対して「狭く深く」アプローチすることで、より効率的な成果を目指します。

マーケティングと営業の連携強化

ABMでは、マーケティング部門と営業部門が共通のアカウントリストを持ち、密接に連携しながら活動を進めます。これにより、一貫性のある顧客体験を提供できるようになります。

測定指標の変化

従来のマーケティングでは、リード数やコンバージョン率などの量的指標が重視されていました。ABMでは、ターゲティングの精度、ROI、アカウントエンゲージメントなどの指標に重点が置かれます。

ABM導入のメリットと効果

ABMを適切に導入することで、以下のような効果が期待できます。

営業効率の向上

重要度の高いアカウントに営業リソースを集中することで、営業チームの生産性が大幅に向上します。また、マーケティング部門が事前に関係構築を行うため、営業担当者はより質の高い商談に集中できるようになります。

顧客満足度の向上

各アカウントの課題や関心事に合わせたカスタマイズされたアプローチにより、顧客にとってより価値のある提案が可能になります。結果として、顧客満足度の向上と長期的な関係構築につながります。

マーケティング予算のROI(投資対効果)改善

限られたマーケティング予算を重要アカウントに集中投資することで、全体的なROIの改善が期待できます。多くの企業でABM導入後にマーケティング効率が向上したという報告があります。

営業・マーケティング連携で実現するABM戦略

ABMの成功には、営業部門とマーケティング部門の緊密な連携が不可欠です。

一貫した顧客体験の提供

マーケティング施策から営業活動、アフターフォローまで、すべての顧客接点で一貫したメッセージとサービスを提供することで、顧客からの信頼獲得につながります。

情報共有による精度向上

営業部門とマーケティング部門が持つ顧客情報を統合することで、より精度の高いアカウント分析と施策立案が可能になります。顧客の課題、市場動向、営業活動の進捗などの情報を組み合わせることで、競合他社にはない独自の価値提案ができるようになります。

スピーディーな意思決定

営業・マーケティング連携体制により、市場の変化や顧客のニーズに対して迅速に対応できます。部門間の調整時間を短縮し、機会損失を最小限に抑えることが可能です。

まとめ

ABM(アカウントベースドマーケティング)は、BtoB企業にとって極めて有効な営業戦略です。従来の「数撃てば当たる」アプローチから脱却し、重要アカウントに対する戦略的で個別最適化されたアプローチを採用することで、営業効率の向上と顧客満足度の向上を同時に実現できます。

特に営業・マーケティング部門の連携により、一貫した顧客体験の提供と迅速な意思決定が可能になり、競合他社との差別化を図ることができるでしょう。ABMの導入を検討している企業は、まずターゲットアカウントの明確化から始め、段階的に取り組みを拡大していくことをお勧めします。