埋もれたデータがお宝に!AIを活用した非構造化データ分析

埋もれたデータがお宝に!AIを活用した非構造化データ分析

2025.05.02
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近年、企業が保有するデータ量は爆発的に増加しています。しかし、そのうち約80%は「非構造化データ」と呼ばれる形式化されていないデータであるとも言われ、多くの企業ではその活用方法に頭を悩ませています。メール、SNS投稿、画像、動画、音声データなど、日々生成される膨大な非構造化データには、企業のビジネスにおいて貴重な洞察や情報が眠っているにも関わらず、従来の分析手法では十分に活用できないというジレンマがありました。そこで注目されているのが、AIを活用した非構造化データの分析・活用方法です。
本記事では、非構造化データとは何か、なぜその活用が重要なのか、そしてAI導入によってどのような価値を引き出せるのかについて解説します。当社のAI導入事例のひとつも紹介します。非構造化データやAI活用を検討中の方は必見の記事です。

非構造化データとは?その特徴と企業にとっての価値

非構造化データとは、従来のデータベースで扱われるような整理された形式(行と列)になっていないデータのことを指します。具体的には、テキスト文書、Eメール、SNSの投稿、画像、音声、動画などが該当します。

これらのデータは以下のような特徴を持っています。

  • 定型的なフォーマットがない
  • データベースに直接格納しづらい
  • 検索や分析が難しい
  • 情報量が豊富だが、その価値を引き出すには加工が必要

企業活動において生成されるデータの約80%が非構造化データと言われており、この「眠れる情報資産」を活用できるかどうかが、今後のビジネス競争力を左右する重要な要素となっています。DX(デジタルトランスフォーメーション)が進む中、この非構造化データの活用は避けて通れない課題となっているのです。

非構造化データ活用の課題とは

多くの企業が非構造化データの活用に苦戦している理由には、いくつかの障壁が存在します。

1.非構造化データの量と処理能力の問題

非構造化データは構造化データに比べて容量が大きく、従来のシステムでは処理に時間がかかります。例えば、1時間の動画データは数ギガバイトにも及ぶことがあり、その中から有益な情報を抽出するには時間が必要です。

2.非構造化データの多様性と複雑性

テキスト、画像、音声など形式が多岐にわたり、それぞれに適した分析手法が必要です。また、言語の曖昧さ、文脈依存性、文化的背景なども理解する必要があります。

3.専門知識とスキルの不足

非構造化データを分析するためには、データサイエンスやAIに関する専門知識が必要ですが、そうした人材は不足しており、育成にも時間がかかります。

4.プライバシーとセキュリティの概念

個人情報を含む非構造化データの取り扱いには、コンプライアンスやセキュリティ面での配慮が必須となります。

これらの課題を克服するためには、AIを活用した効率的なデータ処理と分析の仕組みが不可欠です。

AIによる非構造化データ活用の方法

AIの非構造化データを扱う上で強力なツールとなります。具体的にどのようなAIが非構造化データの活用を可能にするのか、その方法を見ていきましょう。

1.自然言語処理(NLP)でテキストデータを理解

自然言語処理技術により、メールや文章、SNS投稿などのテキストデータから感情分析、トピック抽出、要約生成などが可能になります。例えば、顧客からのフィードバックやサポート問い合わせを分析し、製品改善のヒントを得ることができます。

生成AIの発展により、非構造化テキストデータからの情報抽出と新たな価値創造が飛躍的に向上しています。

2.AIによる画像認識・音声認識技術の活用

画像認識AIを使えば、大量の写真や動画から特定のオブジェクトを検出したり、品質検査を自動化したりすることができます。また、音声認識と自然言語処理を組み合わせることで、会議の内容を自動的にテキスト化し、重要なポイントを抽出することも可能です。

3.データ統合と横断分析

AIを活用することで、異なる形式の非構造化データと構造化データを統合し、横断的な分析が可能になります。例えば、顧客の購買データ(構造化)とSNSでの発言(非構造化)を組み合わせることで、より深い顧客理解が得られます。

4.予測分析とデータドリブンな意思決定

非構造化データから抽出した洞察を基に、AIが将来のトレンドや顧客行動を予測し、経営判断をサポートします。これにより、データドリブンな意思決定が可能になり、ビジネスの成功確率を高めることができます。

非構造化データ活用の成功事例

理論だけでなく、実際にAIを活用して非構造化データから価値を創出している企業の事例を紹介します。

美容業界における非構造化データ「クチコミ」のAI分析事例

国内No.1の美容メディアに蓄積される、約2,000万件にも及ぶ消費者の口コミという非構造化データ。これをAIを活用して分析し、価値ある情報へと変換することに成功した事例を解説します。

口コミデータは、文章量が長く、しっかりと書かれているという特徴があり、消費者個人の生の声が詳細かつ熱量高く記録されています。
この膨大な非構造化データに対し、当社ベルシステム24グループの株式会社シンカーは、アイスタイル社と協力し、生成AIを活用した次世代クチコミ分析ツールを開発しました。このツールにより、膨大なクチコミデータから顧客ペルソナを自動生成したり、トレンドを分析したりすることができます。

特に注目すべき点は、従来なら市場調査やアンケート、インタビューといった手法で収集していた情報を、すでに蓄積されているクチコミデータから抽出できるようになった点です。顧客の非構造化テキストデータと、会員情報や購買データなどの構造化データを組み合わせることで、従来は把握が難しかった消費者の深層心理や真のニーズを明らかにし、化粧品ブランド企業の商品開発やマーケティング戦略の意思決定をサポートしています。

このプロジェクトでは、アイスタイルが持つ美容に特化した質の高いクチコミデータと、当社が持つVOC(Voice of Customer)活用ノウハウとデータマーケティング技術を融合させることで、データを単に蓄積するだけでなく、企業の意思決定に活かせる「宝の山」へと変換することができました。クチコミデータからAIがペルソナを生成し、人間の主観に依らない網羅的な分析が可能となっています。

非構造化データ活用の重要性がますます高まる中、このようなツールは化粧品業界だけでなく、あらゆる業界のテキストデータ(お問い合わせ、アンケート、SNSの投稿など)への応用が期待されています。

コンタクトセンターでの活用例

ベルシステム24は、年間5億件に及ぶ顧客応対の実績があります。この応対から生まれる膨大な非構造化データ(通話記録など)を活かし、生成AIで顧客のインサイトをつかむ「ヒトトナリAI」のサービス提供を行っています。

従来のような顧客の行動データやインタビューだけでは、本当の顧客理解のためには課題があり、マーケティングへの直接的な活用は難しいものでした。
そこで、通話やチャット履歴などの非構造化データを生成AIで分析し、インサイトを分析・スコア化することで、広告やCRM施策への活用を可能にしました。

非構造化データとAIを活用したOne to Oneマーケティングを検討中の方は、ぜひ一度お問い合わせください。

AI導入のステップと成功のポイントを解説

非構造化データ活用のためのAI導入を成功させるには、以下のようなステップとポイントを押さえることが重要です。

1.AIを活用する目的とゴールの明確化

まずは「なぜ非構造化データを活用したいのか」「どのような価値を創出したいのか」を明確にします。漠然と「AIを導入したい」というスタートでは、成功確率は低くなります。

2.活用するデータの特定と収集

目的に合わせて、どの非構造化データを活用すべきかを特定します。その上で、データの収集・保存・管理の仕組みを整えます。この際、プライバシーやセキュリティに配慮した設計が重要です。

3.段階的なAI導入

いきなり大規模なAIシステムを導入するのではなく、小さな実証実験(PoC)から始め、成果を確認しながら段階的に拡大していくアプローチが効果的です。

4.AIリテラシー向上と組織体制の整備

AIシステムを効果的に活用するためには、データサイエンティストだけでなく、ビジネス部門のAIリテラシー向上も重要です。また、例えばカスタマーサポートとマーケティングのように、部門横断的な協力体制を構築することで、より広範な非構造化データ活用の可能性が見いだせます。

5.AIシステムの継続的な改善と評価

AIシステムは導入して終わりではなく、継続的に精度や効果を評価し、改善していくことが重要です。特に非構造化データの分析においては、ビジネス環境の変化に合わせて柔軟に調整していく必要があります。

まとめ:非構造化データ活用がもたらす未来

非構造化データは、多くの企業において「眠れる資産」となっています。AIの進化により、これらのデータから価値を引き出す技術的なハードルは着実に下がってきており、今こそ積極的な活用を検討すべき時期と言えるでしょう。

非構造化データの活用は、単なる業務効率化にとどまらず、新たな顧客価値の創造や、これまで見えなかった市場機会の発見につながる可能性を秘めています。デジタルトランスフォーメーションを推進する上で、非構造化データの活用とAI導入は避けて通れない重要な経営課題です。

「データは21世紀の石油である」と言われるように、非構造化データという埋もれた資源から価値を引き出せるかどうかが、これからの企業競争力を左右することになるでしょう。まずは小さな一歩から、自社に合った非構造化データ活用の道を探ってみてはいかがでしょうか。