自治体DXの成功事例!先進的な取り組みを紹介

自治体DXの成功事例!先進的な取り組みを紹介

2025.05.02
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近年、日本全国の自治体でデジタルトランスフォーメーション(DX)の波が押し寄せています。少子高齢化による労働力人口の減少や財政難といった課題に直面する中、自治体DXは業務効率化と住民サービス向上を両立させるための重要な取り組みとなっています。本記事では、自治体DXとは何かをわかりやすく解説し、様々な先進的な取り組み事例を紹介します。これからDXに取り組む自治体の参考となるよう、様々な角度から事例を掘り下げていきます。

自治体DXとは

定義と目的

自治体DXとは、地方自治体がデジタル技術を活用して行政サービスの提供方法や業務プロセスを変革し、住民の利便性向上と業務の効率化を図る取り組みです。単なるデジタル技術の導入ではなく、DXによって地域住民のQOL(生活の質)向上につながる高付加価値なサービスを提供することを目指しています。自治体DXの本質は、「変革」にあり、従来の業務やサービスを根本から見直すことが重要です。

2020年12月に総務省が策定した「自治体DX推進計画」では、2021年1月から2026年3月までの期間に自治体が重点的に取り組むべき事項や実施すべき内容が定められています。この計画に基づき、全国の自治体でDX推進の動きが加速しています。

自治体DXが求められる背景

自治体DXが推進される背景には、以下のような社会的課題があります。
  • 少子高齢化と人口減少:労働人口の減少により、自治体職員の確保が難しくなっています

  • 行政需要の増加:高齢化社会が進む中、福祉サービスなど行政需要は増加の一途をたどっています

  • 財政の厳しさ:自治体の税収減少により、効率的な行政運営が求められています

  • 住民のデジタル化ニーズ:民間サービスのデジタル化が進む中、行政サービスにも同様の利便性が求められています

  • 「2025年の崖」への対応:DX推進が遅れると、2025年以降に大きな経済損失が生じるとされています

こうした課題に対応するため、自治体ではデジタル技術を活用した業務改革が急ピッチで進められています。

総務省が定める自治体DXの重点取り組み事項

総務省の「自治体DX推進計画」では、以下の6つの重点取り組み事項が定められています。

  1. 自治体情報システムの標準化・共通化:2025年度までに基幹系17業務を標準仕様に準拠したシステムへ移行
  2. マイナンバーカードの普及促進:各種行政手続きのオンライン化や本人確認の簡略化を実現
  3. 行政手続きのオンライン化:特に住民の利便性向上に資する手続きを優先的にオンライン化
  4. AI・RPAの利用推進:定型業務の自動化による業務効率化
  5. テレワークの推進:災害時の業務継続性確保や働き方改革の推進
  6. セキュリティ対策の強化:デジタル化に伴うセキュリティリスクへの対応

これらの取り組み事項を柱に、各自治体では様々なDX施策が展開されています。

※出典:総務省「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」

全国で見られる先進的な自治体DXの取り組み

1. 最新技術を活用した安全・安心な地域づくり

一部の先進自治体では、ドローンやIoTセンサーなどの最新技術を活用した安全・安心な地域づくりが進められています。例えば、海水浴場の安全管理にドローンを導入し、ライフセーバーのパトロール活動を支援する取り組みがあります。カメラとマイクを搭載したドローンにより、人の目や声が届かない場所も監視できるようになり、限られた人員で効果的な監視体制を構築しています。

また、DXの一環として街中に設置したセンサーから収集したデータを活用し、混雑状況や交通量を可視化することで、都市計画や防災対策に役立てる取り組みを行っている自治体もあります。こうした最新技術を活用したDX施策は、人口が減少する社会における人的リソースの効率的な活用の好例と言えるでしょう。

2. 行政手続きのデジタル化による住民サービス向上

多くの自治体では、DXの第一歩として行政手続きのデジタル化による住民サービスの向上に取り組んでいます。窓口を訪れなくても、住民がスマートフォンやパソコンから24時間いつでも各種申請や手続きができるオンライン申請システムの導入や、マイナンバーカードを活用したコンビニでの証明書発行サービスなどが広がっています。これらはDXによる住民サービス向上の基本的な取り組みと言えるでしょう。

特に先進的な自治体では、DXの観点から直感的に操作できるUI/UXデザインを採用し、デジタルに不慣れな住民でも簡単に利用できる環境を整えています。また、複数の手続きをワンストップで完結できるポータルサイトの構築なども進められており、住民の利便性向上と行政の効率化を同時に実現しています。

このようなDXによる行政サービスの変革は、「住民中心」の視点を大切にしています。

3. AI・RPAを活用した業務効率化

職員の業務効率化を図るため、AI・RPAを活用した取り組みも広がっています。例えば、住民からの問い合わせに自動で回答するAIチャットボットの導入や、定型的な事務作業をロボットが代行するRPAの活用などが進められています。

あるケースでは、RPAの導入により従来手作業で行っていた帳票処理の時間が大きく削減されたという成果も出ています。また、AIによる議事録の自動作成や、税務関連業務の効率化なども進められています。さらに、行政データを一元的に可視化するダッシュボードを庁内で共有することで、各部署の業務状況をリアルタイムに把握し、必要な人員配置や業務改善につなげている自治体もあります。これらの取り組みにより、職員は単純作業から解放され、より付加価値の高い業務に注力できるようになっています。

4. データ活用による政策立案

一部の先進自治体では、DXの核心とも言えるビッグデータの分析に基づく科学的な政策立案(EBPM: Evidence-Based Policy Making)の取り組みも始まっています。例えば、GISシステム(地理情報システム)を活用して人口動態や交通量、公共施設の利用状況などのデータを地図上に可視化し、施策の立案に役立てるDX事例などが挙げられます。

また、オープンデータの活用も進んでおり、行政データを積極的に公開することで、民間企業や市民による新たなサービス創出を促進している事例もあります。データに基づく政策立案というDXの手法により、自治体は限られた予算の中でより効果的な施策の実現が可能になっています。

こうしたデータドリブンなDX推進は、自治体における意思決定の質を大きく向上させる可能性を秘めています。

5. デジタルデバイド対策とデジタル人材育成

DX推進と同時に、高齢者などデジタル機器の操作に不慣れな住民へのサポートも重要な課題となっています。一部の自治体では、デジタルデバイド対策として、スマートフォン教室の開催やICT支援員の派遣など、きめ細かなサポート体制を整えています。「誰一人取り残さない」という自治体DXの理念を実現するために欠かせない取り組みです。

また、DX推進を担う人材の育成も積極的に行われています。職員向けのDX研修プログラムの実施や、DX推進リーダーの配置など、組織全体のデジタルリテラシー向上のための取り組みが進められています。さらに、外部の専門人材を「DX推進アドバイザー」として招聘するなど、民間のノウハウも積極的に取り入れています。

このようなDX人材の確保・育成は、持続的なDX推進のための土台となる重要な要素です。

弊社が支援した藤沢市の事例

これまで全国の先進的な事例を紹介してきましたが、ベルシステム24でも自治体DXの支援を積極的に行っています。特に自治体のデジタル化をけん引する存在ともいわれる藤沢市様のDX推進に携わった実績があります。
当社が支援した藤沢市様の取り組みでは、市民の方からの問い合わせ先が分かりづらい、職員が問い合わせ対応に追われて本来の業務に集中できないという課題を解決するため、問い合わせ窓口の一元化、コンタクトセンターのオペレーターによるワンストップ対応などを導入しました。

導入の結果、1年間で市職員の4,000時間近い業務削減という成果につながりました。オムニチャネル化により市民がスムーズに問い合わせをできるようになった、FAQを充実させることで問い合わせ自体を削減することができた、という結果も出ています。

自治体DXの推進を検討されている方は、ぜひ当社へお問い合わせください。

自治体DX成功のポイント

全国の先進事例から見えてくる、自治体DXを成功させるためのポイントを整理すると、以下のようになります。

  1. 住民目線のDXサービス設計:住民の利便性向上を第一に考えたDXサービス設計が重要です
  2. 業務プロセスの見直し:単にデジタル化するだけでなく、業務プロセス自体を見直すことが効果的です
  3. 段階的なDX導入:小規模な施策から始め、住民からのフィードバックを得ながら段階的に展開することで、混乱を最小限に抑えられます
  4. DX人材育成の強化:DX推進には専門知識を持った人材が不可欠です。研修や外部連携による人材育成が重要です
  5. 部署間・自治体間の連携:縦割り行政の壁を越えた連携や、他の自治体とのノウハウ共有が効果的です
  6. セキュリティ対策の徹底:DXに伴い増大するサイバー攻撃のリスクに対応するため、適切なセキュリティ対策が必要です

まとめ

自治体DXは、単なるデジタル技術の導入ではなく、住民サービスの質を高め、業務効率化を実現することを目標としています。全国の先進事例からわかるように、各自治体がそれぞれの地域特性や課題に合わせた独自のDX施策を展開しています。
重要なのは、「何のためのDXか」という目的を明確にし、住民目線でサービスを設計することです。また、職員の理解と協力を得るための意識改革や人材育成も欠かせません。

2025年度までに基幹系17業務システムの標準化・共通化が求められるなど、自治体DXは待ったなしの状況です。本記事で紹介した先進事例を参考に、各自治体がそれぞれの状況に合ったDX推進を図ることが期待されます。
デジタル技術を活用した新たな行政サービスの形が、人口減少社会における地域の持続可能性を高め、誰一人取り残さない、人に優しいデジタル社会の実現につながるでしょう。